Neetel Inside 文芸新都
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【18禁】ちんちん小説集
ペニスレイン

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 大気の組成は現在と昔では違っている。詳細は省略するが、誕生して間もない地球にタイムスリップしたとしても、テキオー灯を浴びない身体では生きてはいけない。現状と昔が同じだったわけではない。魔法と呼ばれた事柄が科学で証明できるようになり、奇跡と言われる現象が、稀に起こる気候現象に過ぎないと判明したりする。現在ではオカルト扱いされている霊的な現象だって、近い将来には霊的粒子論とかで証明されてしまうかもしれない。

 ちんちんの雨が降っている。
 小さな雪よりもずっと儚い、目をこらさなければちんちんだと分からないその雨は、実はずっと昔から降っていたものらしい。初めて目にした時は皆驚き、恐れたものの、無害であることが分かってくると、慣れてしまった。
 科学者たちの見解は「古来より放たれ続けた、卵子と結びつかなかった精子たちの残骸が一定数空の上に溜まると落ちてくるもの」ということだ。つまりは子を成すことのできなかった精子たちは、水蒸気のように空に昇っていたのだという。ちんちんの雨は人間の性器だけではなく、様々な生物の性器の形をしているから、解き放たれた精子の哀しみは人間だけのものではない。

 空から降るちんちんの雨を、人類が一定量取り込む閾値を超えたから、見えるようになったのだという。見えるようになったからといって、何かに触れればすぐに消えてしまうその雨は、何も孕ませられない。私たちの日常にたまに降ってくるものに過ぎなかった。

 見えなかっただけで誰の横にもちんちんが降っていた。

 ライネ先生という方が「へ〜きなちんちん」という新連載を始められた。
 作者コメントに「文藝新都の山下チンイツ先生に感化されて、私もちんちん漫画を描こうと思いました。」とあった。
https://manga.okiba.info/comic/503
 私はそれを読んだ瞬間「そうだ、誰もがちんちんネタを持っているのだ。気付かないだけで、これまで可視化されなかっただけで」と思った。これを今読んでいるあなたにも覚えがあるだろう。ちんちんについて何か書こうとか、ちんちんについてのドラマを想像してみたんだ、とか、ちんちん生えてないけどちょっと生やしてみようかな、とか。私の文章はきっかけに過ぎない。かつて空から降るちんちんは見えなかった。しかし私たちが気付くのが遅かっただけで、大昔からちんちんは降っていた。

 地表にたどり着くちんちんは僅かなものだという。大半のちんちんは降っている最中に消えてしまうのだとか。見え始めた途端に研究しつくされて、皮を剝がされていく(いや、剥かれていくというべきか)ちんちんたち。一つ一つは儚いが、確かに一時は存在していた。そんなネタをあなたも書いてみてはどうだろう。描いてみてはどうだろう。この一行を書くために私はこの連載を続けていたのかもしれない。

 これを書いている今、窓の外では雨が降っている。雨とちんちんは同時には見えない。降っているのかもしれないが、ちんちんは雨にかき消されてしまう。それでもどこかでちんちんは降る。

       

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