Neetel Inside 文芸新都
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過去の東京
戦の終盤-2

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追撃を始めた北条軍の前に敵方(あとで上杉憲政とわかった)は最早相手になっていなかった。
足の遅いものは、槍が後ろから突き出され背中から腹の穴ができていた。
北条軍に理性はなく、ただ本能のまま行動しているような気がした。
人間を相手にしている目ではなく、なにか、猪でも狩っているような心構えである。
そんなボクもすこしでも、北条軍の正規兵士なるために、「人」を「狩ろう」としていた。
途中で、上杉軍のものであろう、槍を拾い追撃に加わる。
正規兵士ではないぶん装備が軽く、ぐんぐん上杉軍に近づいていく。
最後尾の敵まで、あと100m・・・・50m・・・30・・・20・・10
この時点で持っていた槍を投げた。
その槍は案外まっすぐに飛び、最後尾の上杉軍の足を貫いた。
あとは、止めを刺すだけなので走るのをやめてゆっくりと余裕を持って足を貫かれた男に近づいた。
しかしその男立ち上がりこっちを向いた。

えええええええええええ。
足・・?え?つらぬか・・?あれ?刺さって?え?
確かにやりは貫いている。
でも立っている。
※エン・・・ドルフィンか・・・。
おそらく今敵は、足を貫かれた痛みはなく、僕しか見えていないだろう。
怖い―――――。
最初の男より――――。
何をするかわからない。目が―――。
この男はもう死んでいる。
逃げるそぶりすら見せない。
やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。

よくあることだ。
空手の有段者が、路上のケンカでまける。
ボクシング経験者が素人にワンパンチ食らう。
剣道でもそれは例外ではない。
え?そこでて来るの?とか、小手をちらちら見せて小手誘ってるのに面にきたりなど、逆に初心者はやりにくい。

何故初心者がやりにくいかは
セオリーを無視してくる。
自分を捨てきって打ってくるので、慢心しているこっちは、かなり動揺してしてしまう。

今の敵は、捨てきっているのでどこに来るかわからない。
頭か?一気に突いてくるか?それともなんだ?
足が震えてる。
この男に勝てない。
否、負ける。
否、ここで死ぬ―――。

ここで僕の取った作戦は「待つ」だった。
間違いなく相手の足から大量の血が出ていて、このまま出血多量を狙うものだった。
間合いに入られるのを避ける。
相手が一歩詰めれば、一歩引く。
足痛くねーのかよ!と言いたくなったが、息を吐いてるときには、人間咄嗟には動けないので、言わなかった。
詰める。引く。詰める。引く。
相手の脂汗はまるで、霧吹きを顔に当てているかのように、汗が玉になっていた。
エンドルフィン・・・?きれたか。
しかし、まだわからない。ここで捨て身の一撃が来るかもしれない。
詰めてくる。一歩さが――――。
後ろに死体!?仰向けにこけたボクは必死だった。
立たなきゃ。立たなきゃ。
ようやく片膝をついて立とうとしたとき。
「動くな」
あ・・・。見上げると、敵が憤怒の形相でこちらを見下している。
相手が刀を振り上げる。
ボクは怖くなって目を瞑る。
「坊主。安心して死ね。もうすぐ俺も行くだろうからな。」
ビュッ!と刀が振り下ろされる。

目を開けたとき、目の前は真っ赤だった。










※エンドルフィンとは脳内麻薬と呼ばれるほどの内在性鎮静系の神経伝達物質である。
この効果はモルヒネの6倍といわれるほどの鎮静作用がある。
ランナーズハイなどはエンドルフィンが分泌されているのではないかといわれている
バキでもやってたね。

       

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