Neetel Inside 文芸新都
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唯、霧中の宝石を掴みたいと思った
石の上で

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石の上に一人の子供が座っている。
子供は石に座ってぼっとしている。

一人の男が通りかかり声を掛ける。
「こんにちわ」
子供は返事をする。
「こんにちわ」
男は子供に問いかける。
「何をしてるんだい?」
子供は男に答える。
「何をしてるかわかんないんだ」
そして子供は問いかける。
「貴方は何処に行くんですか?」
男は答える。
「それを見つけに行くんだよ」
「そうですか、お気をつけて」
男はそこから去って行った。

一人の女が通りかかった。
「こんにちわ」
子供が先に話しかけた。
「こんにちわ」
子供は女に問いかける。
「何処へ行くんですか?」
女は子供の問いに答える。
「好きな人の場所に」
「そうですか、気をつけてくださいね」
女はそこから立ち去った。

一人の老人が通りかかった。
「「こんにちわ」」
二人は同時に話しかけた。
「何処へ行くんですか?」
「何処へ行くんだろうね?」
子供の問いに老人は答えていく。
「どうすればいいと思いますか?」
「何かをすればいいと思うね」
「何かってなんですかね?」
「それが人生の問いだと思うね」
老人は子供の隣に腰を下ろした。
「だがしかし、一つは言えるね? 過去があるから今日があり、そして未来がある。立ち止まるのは老人からで十分だ」
「どういうことですか?」
老人はニコりと笑って、答える。
「何、蜘蛛の巣状に道はあるということさ、進むのもいいだろう、戻るのもいいだろう。だが立ち止まるのはいただけないね」
「どこかに行けと言う事ですか?」
老人は答える。
「さぁ? わからないね。君は君なのだから、君の辿る道は誰かが指図する物ではないのだから」

少年は立ち上がった。

       

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