Neetel Inside 文芸新都
表紙

落下
チェンジ

見開き   最大化      

 空に線を描くような軌道で飛んでいく一羽の鳥を、前髪を掻き分けながら目で追いかけた。首をぐるりと回したところで太陽をじかに見てしまい、フラッシュを焚かれたような眩暈を覚え細める。残光が真っ暗の中で柔らかな半円のようにふわふわと浮かんでいた。
 目を擦りながら、屋上のフェンスがない手すりの部分にもう片方の手を置く。傍らには僕がさっき運んできたばかりの布団が干されていた。やはり布団があるとは言えあの硬い教室の床はかなり体に負担がかかる。
「あとどれくらいあるっけ?」
「多分あと一回運んだら終わりじゃないか?」
 僕と同じくじゃんけんで負けて布団を運んでいるクラスメイト達の愚痴を聞きながら、僕は大きく伸びをした。布団と同じで太陽の光を浴びていると体の内側から毒素のようなものが抜けていくような錯覚を覚え、同時に夏のうだるような暑さを思い出す。
「じゃあ、さっさと運んでしまおうよ」
 てきぱきと教室へと戻ろうとするその声に僕も従おうと踵を返す。だがそこでポケットに入れてあった携帯が電話の着信を告げ、僕は立ち止まってディスプレイを開いた。画面に麻奈と表示されている。
「おはよう」
『おはよう。もしかして寝てた?』
「いや、今日は一時間前には起きてた」
『そうなんだ。あのね、今学校に来たんだけど。教室にそのまま行ったらいいのかな?』
「運動場側?」
『うん、そうだよ。今門を入ったところ』
「ちょっと待って」
 クラスメイトに「悪い、ちょっと先に行ってて」と言うと「お前の分残しとくからな」との台詞を受け取り、僕は運動場側へと移動する。フェンスの金網越しから見下ろした。言うとおり、門の辺りで電話を手にしている彼女の姿が見える。
「今屋上にいるんだけど、分かる? 上、上。校舎の上」
『え?』
 普段使わない場所なのですぐに理解できなかったのか、きょとんとした返事をしながらも、彼女は素直に首を上に傾けた。僕から見た彼女は缶ジュースくらいのサイズでしかなく、向こうからも当然それは同じなのだが、なんとか見つけることに成功したらしい。
『あ、いた』
 僕は自分が迎えられた時と同じように、麻奈に向けて手を振った。
 彼女もそれに応えるように手を振る。
「姿が見えてるのに電話するのって変な感じだな」
 もう少し近い場所で会えればよかった。自分と電話をしている時の彼女の表情がどんなものかなんて見れる機会はそうそうない。
『あはは。そうだね、なんか変かも』
「ちょっと待っててよ。そっち行くから」
『え? いいよ、そんなわざわざ。教室に行けばいいんだよね?』
「どうせジュースでも買おうと思ってたし、よかったら一緒にどう?」


 僕は布団を運んできた時とは違い、早足で階段を飛び降りると、素直に――日陰へと移動していたが――待っていた麻奈のところへと駆けつけた。
「ういっす。よく来たな」
 その僕の言葉に「なんか、その言い方康弘君自分の家みたい」と笑顔が帰ってくる。
「家みたいなもんだよ。皆好き勝手にやってるから」
「そうなの? なんか来る時ちょっと緊張しちゃった」
「なんで?」
「だって、皆と過ごすのって、どんな感じなんだろうって思って」
「今のところ、楽しくやってるよ」
 僕と違って慎重なところがある彼女ならではの悩み。
 正直、皆好き勝手やりすぎくらいだ、と言おうとも思ったがやめておく事にした。いたずらに不安を煽る事もないし、いいか悪いかの判断は彼女自身が下すだろうから。
 僕は麻奈が肩からぶら下げていたバッグを持ってあげ、校門の外へと逆戻りした。
 通学路なので元々人通りは少ない道を二人でゆっくり歩きながら、時折、学校の方へと向かう誰かとすれ違ったり、逆に学校から出てきたと思われる誰かに追い越されたりしながら、近くの自動販売機へと向かう。
「どうするの? 今日は泊まるの?」
「うーん、顔は出すけどやっぱり夜には帰るかな」
「……それがいいかもな」
 本心からそう言う。正直麻奈と一緒に教室で寝るなんて落ち着かないし、他の男供に彼女の無防備な姿を見せたくもない。とは言え、生徒達が四六時中学校にいると言う事は、やはり麻奈だけでなく殆どの生徒がそうではなかった。元々バイトなどをしているような者は、そちらの方に顔を出したりもしているし、学校には当然風呂などもついていないので、家に帰ったりもする。今朝も何人かは荷物だけを残して出て行ってしまった。それでも生徒の数は昨日よりも増えているように思える。
「俺も麻奈が帰るときにでも一回家に戻ろうかな」
 見慣れた自動販売機へと辿り着き、僕は小銭を入れた。
 商品の三割ほどは売り切れになってしまっている。補充される事はもうないだろうから、あと数日でこの自販機は用済みとなってしまうだろう。僕は人気商品では決してない残り物の中からまだマシだろうと言う物を選び、ボタンを押す。コンビニと違い、冷えているものが出てくるのはありがたかった。残った小銭を麻奈に渡し彼女が買い終わると、再び学校へと向かう。
「智史のやつ、まだ来てないんだよな」
「そうなの? 連絡は?」
「ないけど、だからって心配するほどでもないしな」
 そう返事をして頭を掻いた。
 喫茶店で話してからまだ二日しか経っていないので、単純に家で家族と過ごしているだけかもしれない。
 校舎に入り、教室へと戻ると麻奈を見たクラスメイトが歓迎した。全員に挨拶をしている彼女から離れると僕は残っていた布団を持ち上げて屋上へと向かう。
 二階から四階、そしてその上にある屋上へと向かう間に、何人かの見知った顔と挨拶を交わしながら、布団を干し終わり教室へ戻ろうとしたところで、背中から声をかけられた。
「柳君」
「あ、諏訪先輩、どうも」
 普段着でもしゃんとした雰囲気を漂わせている三年生の諏訪先輩だった。大人びていて、一学期はクラス委員などを任されている優等生であり、聞いた話では東京の国立大学を狙っていたと言う話だが、こうやって直接話すとそれもありえない話ではないと思われる。
 交友が深いというわけではなく、共通の知人を介していて何度か話したことはあるが、特別二人でなにかしようとしあう訳ではない。
「どうかしたんですか?」
「うん。ちょっと三年生のクラスで話し合ってる事があってね。今下の学年の子達にも話をしようとしてるところなんだ」
 銀縁の、いかにも理知的に見える――それとも彼がかけているからそう見えるのだろうか――メガネを指で押さえながらそう言う。
「話し合ってること?」
「柳君はいつごろ学校に来たの?」
「昨日ですね」
「昨日か。じゃあ、まだあまり把握してない事もあると思うんだけど、ちょっと全体でルールみたいなものを決めようと思ってね」
「ルールですか?」
「うん」
「ちょっと座ろうか」と言う彼の言葉に頷いて、僕らは階段に並んで腰を下ろした。足元に煙草が転がっていて、僕はそれを踏みつける。
「それ」
「え? ……煙草ですか?」
「そう。そういうの、吸うのは構わないんだけど、ほら、そうやって無闇に捨てる人が多くてさ。切りがないだろ? その内、なんでも廊下に捨てるようになってしまうんじゃないかとか。だからそういうのをね、ちょっとなんとかしようかと言う事になったんだ。日替わりで掃除するとかね。あとは運動場とかの使用にも順番を決めたりとか」
「あぁ、なるほど」
「まだ具体的にどうするかとか決めてるわけじゃないけど、とりあえずそれぞれのクラス全部で話し合おうと思うんだ。柳君は2-Cだったよね。今度話し合いをしようと思うから、誰か代表を一人決めてほしいんだ」
「いきなりっすね。難しいな」
 難問だと大仰に腕を組んで見せた。諏訪先輩も分かっていないわけではないだろうが、問い質す事にする。
「多分、掃除の日にちとか決めても、面倒だからって学校から出てく奴とかいるだろうしなー」
「まぁ、そうだろうね」
 あっさり頷かれて拍子抜けする。
「でも、そうはならないと思うな」
「そうですか?」
「わざわざ、クラスメイトに嫌われる事しないよ。一緒に過ごしたいって思ってるなら尚更ね」
 一理あるその物言いに僕は黙って頷いた。
 確かに、たかだか掃除をサボって皆から反感を抱かれるよりは、面倒でも手伝って事無く終わる方が賢い選択だった。なんせ、今自分や遥を振り返ってみただけでもそうなのだが、他の生徒にもある兆候が現れてきている。
 自分を押し殺す事はやめる。
 確かにそれだけ聞けばいい事のように思えるのだが、如何せん後がないという現実は僕らを少し無責任へと追いやってきていた。それは遥の様にポジティブな無責任でもあるし、人によってはネガティブでもありえる。例えば、あの遥の消えていった無数の番号達は、自分達の事でもあるのだ。僕は僕の無言に無言で返す諏訪先輩を横目で見て溜息を吐く。
「先輩はいつから学校にいるんですか?」
「終業式のあとすぐだよ。もう十日以上前から僕達は過ごしてる」
「そんなに全体で考えないといけないほどですかね」
「正直、皆好き勝手やろうって言う気持ちが強いのは確かだね。それ自体に問題があるわけではないんだけど」
「ないわけではないんだけど、度が過ぎると」
「そうだね。度が過ぎすぎるせいか、実は前より束縛が強い」
 予想通りの返事だったので驚きはしなかったが、予想通りであったことに落胆はしてしまった。
 要するに、皆あまり他人の顔色を伺う事をしなくなってしまったのだ。面白ければ面白がるし、楽しければ笑いもする。だがつまらない事には、以前なら出来た愛想笑いもあまり浮かばないし、救いの手を差し出そうとすることもあまり見られなくなってきていた。どうせ、死ぬんだったら嫌な事なんてしないでいい。嫌な奴に愛想を使う必要なんてない。気に入らない奴なんてもうどうでもいい。捨ててしまえ。知った事じゃない、自分は好きな人とだけ最後までいられればいい。好きな事だけやっていよう。だけど自分もなにかしたらすぐに嫌われるかもしれない。なにをしたら嫌われない? なにをすれば好かれる自分になれる? 
 それはこの学校だけではなくて、どこでも同じだろうと思う。ただ密度が高いせいでそれが浮き彫りになっているのだが、確かにその密度は、僕が昨日過ごした校舎のどこかで、パチンと今にも火花が散ろうとしているのかもしれない。
「愛想笑いって大事なもんっすよね」
「そうやって気付く前は、煩わしいものだと思いもするんだけどね」
 今は、自由に振舞おうとする憧憬と、それゆえに切り捨てられる畏怖。その二つが混ざり合って彼の言う束縛へと変わっているのだろう。これからも生きていくならまだ挽回の機会はあるかもしれない。だがこの短い時間の中で誰もが、他人を許し、手を差し伸べ、共感を得るまでの時間を有意義だと思うとは到底思えなかった。そんな中で掃除をサボるなんて分かりやすいミスをわざわざ犯す奴は確かに少ないだろう。
「めんどくせぇ」
 僕は舌打ちをする。
「生きるから嫌いだけど好きな振りとか、死ぬからどうでもいいとか。そうなっても、なりきれない事とか。あー、マジめんどくさいっすね」
「そうだね。本心はやっぱり皆一人で死ぬのは嫌だろうからね。最後の最後に一緒にいたいと思う人に、最後の最後に裏切られないか、皆少し怖がってるね」
「…………」
 僕の愚痴るような言い方に、それでも穏やかに応えた先輩だが、僕はその言葉を聞いて、急激な脱力感を覚えた。だが先輩はそれに気がつかなかったらしく「とりあえず今日か明日にでも、クラスの皆に伝えておいてね」と言い残すと、階段から腰を上げる。
「分かりました」と僕はやや、呆け気味に言ったが、ややあってふと思い出し、
「あの」
「なに?」
「音楽室なんですけど」
「あぁ、あそこにも話しないといけないけど、骨が折れそうだよ」
 聞いた僕に対して苦い顔をして肩を持ち上げた。どんな連中が使っていると言う事も理解しているらしい。
「まぁ、少しは知った顔がいるから、そこら辺から話してみるよ。ありがとう」
 それを言うと今度こそ諏訪先輩は立ち去ってしまった。
 僕は座ったまま、しばらくぼんやりしていたが、煙草を吸って落ち着く事にする。最近本数が増えてきているかもしれない。三階は見えるのが殆ど三年生ばかりで多少居心地の悪さがあったが、向こうはあまりこちらの事など気にしていないだろう。
 僕は目を閉じながら廊下で行われている幾つかの雑談を耳に入れる。
 それはとても楽しそうで、なにも考えなければとても和やかだ。
 だがそれは本物だろうか?
 ここにいる僕は本物だろうか?
 煙草を揉み消した。あんな話の後に廊下に捨てるのは、さすがに後ろめたく折れた煙草を持ったまま僕は階段を降り、教室へと戻る。
「おかえりなさい」
「ただいま」
 帰ってきた僕に麻奈がそう声をかけてきた。
「明日の夜、運動場でバーベキューするんだって」
「へぇ、そうなんだ。じゃあ、明日も麻奈絶対来いよ」
「うん、家に冷凍してる肉があるから私も少し持ってくるね」
「マジで? そりゃ楽しみだな」
 僕は彼女の笑顔に、笑顔を返す。
 脳裏に先輩の言葉がよみがえる。


 最後の最後に一緒にいたいと思う人に、最後の最後に裏切られないか、皆少し怖がってるね


 全く、その通りだ。
 そうなる事が怖くて、彼女に自分の気持ちを言えない自分はとても臆病で、そして苦しい。
 こうやって友達として笑っている僕は本当の僕ではない。僕も皆と変わらない面倒くさい奴の一人だ。
 だけど、この笑顔がある今が、過去になってしまう事。それ以上の恐怖などどこに存在する? 
 僕は束縛される。僕に。

     

 智史から連絡が来たのは、家へ帰ろうとしている途中の事だった。
『じゃあ、もう学校には戻らないのか?』
「そうだな。明日また行くだろうけど、今日は風呂入って家でのんびりするわ」
『じゃあ、家行っていいか?』
「お前な、俺ん家来るなら学校行けよ」
『……まぁ、そうなんだけどさ』
 歯切れの悪い返事に、なにか思うことでもあるのだろうかと
「じゃあ、とりあえず待ってるから来いよ。家の鍵開けとくから」
『分かった。じゃあ後でな』
 通話を切り、僕は自転車を家まで走らせた。程なく辿り着き、部屋に入る。代わり映えしない部屋だが、やはり一人だけの空間と言うのは気が楽にもなった。冷蔵庫を開けるとコンビニから盗んできていたジュースがまだ大量に残っており、僕は一本取り出しながらラジオをかける。
 今日は放送があまり少ないようでようやく見つかると、僕はかけたままにして風呂に入ろうと服を脱ぐ。
 一人で放送しているらしい、その女性は明るくサバサバとした口調で世間話をしていた。嫌味がないので結構聞いている人は多いかもしれない。
『――いただきますって英語は存在しないんですって。だからこれは日本の独自の文化だよね。いただきます。そもそも頂くの元々の意味は頭上に載せるって意味なのね、それがこう時代の流れでもらうという意味が加えられていったらしいんだけど。だからこう私達ご飯を食べる時、胸の辺りで手を合わすでしょ? 本当は頭の上で手を合わすのが正しいんだって。まぁ、知るか! って感じですけど。食事をもらいます。いただきます。ってわけですよ。けど私なんで「いただきます」って言うのかずっと気になってたのね。なんで言うかじゃなくて、なんで「いただきます」なのかなって。風習って言えばそうなんだけど例えば「召し上がります」とかじゃダメなのかなーとか。なんで「もらう」って言葉なのかなって。それでね、思ったの。あぁ、きっとこの牛肉とか、魚とか卵とか、きっとそういう命を、私は貰ってるから「いただきます」なんだって思ったの! まぁ、全然違ったんだけどね。あははは。でもそうやって、命を頂いて、私の命が延びたわけじゃない。だから食事って言うのは「いただきます」って最初に言うのって凄い大事だと思うの……あれ? なんの話だったっけ?』
 風呂から出て、僕が聞きたいと苦笑をしていると智史がインターフォンを鳴らすこともなく、ドアを開けて入ってきた。
「よう」
 部屋着で頭にタオルを巻いた僕にそう言うと「これ前借りてた服返すな」と勝手知ったるかの如くタンスを開けバッグに入れてあった服を入れる。それが終わるとテーブル越しに腰を下ろした。
「この人ラジオまだやってたんだ。凄いな。多分二時間以上やってるよ」
「マジ? さっき聞き出したんだけど、そんなによく話すな」
「まぁ、なんか携帯電話のスピーカーフォンで他の人も参加したりしてるから一人でやってるわけじゃないけど」
「へぇ、いや、それでも凄いな」
「だなぁ。けど、楽しそうだよな」
 しみじみと言う。その姿がなにか考えているようだったが、それは僅かな間でこちらへと向き直る。
「どうだった? 学校は」
「あぁ、結構楽しいぞ。晶とかとつるんでる」
「晶かぁ。早く来いよってメール来てたな」
「来いよ。千尋もお前が来るの待ってたぞ」
「そっちもメール来てた。いや、行こうとは思ってるんだけどな。ちょっと踏ん切りがつかなくて」
「なんの踏ん切りだよ……」
 そう言うものの、それが里美の事だと言う事はすぐに分かった。
 まっすぐで、繊細な智史。
「いや、明日は行くよ。うん、大丈夫」
「お前な、たかだか学校行くのにどんだけ覚悟が必要なんだよ」
 そ知らぬ顔をして笑い飛ばす。智史も辛気臭い雰囲気が居た堪れなかったのか「そうだよな」と太股のあたりを叩いた。話題を変えようと学校での生活はどんなものだったか詳しく聞こうと僕に尋ねてくる。僕も思いつく限り明るい話題を選び、談笑をした。その内、僕達は酒を呑もうと言う事になり、冷蔵庫からビールを取り出すと小さく乾杯をして喉に流し込んでいった。
 どれくらい経っただろうか智史の顔が赤くなり、さらに目が半眼になってきていた。僕達はサッカーの年俸の話だの、あの歌手は売れてダメになっただの、コカコーラとペプシコーラはどっちが上手いかだの、ああだのこうだの他愛のない事を言いながら過ごしていたが、智史の「あのさ……」と言う言葉に僕は「うん?」と答えた。
「やっぱ学校行ったら里美の事思い出すしさ。けど思い出しても、里美いないだろ? なんかそう思うと行くのが億劫になってさ」
「そだな、いなかったな」
 僕はビールを呷りながら、淡々と返事をする。普段より饒舌だがまだ完全に酔ってはいないようだった。
「だろ? でさぁ、俺本当考えた。俺、どうしたらいいのかなって。でそうやって考えたらさ。結局出来る事って里美と関係ないことばっかりなんだよな。もうそれが空しくてさ」
「しょうがねえだろ……こうなっちまったんだから」
「分かってるよ。もう里美はいない。ここにもいないし、なんて言うのかな、向こうの心みたいなものの中にも俺はいないんだろうし、なんか本当にいないんだよな、色んな意味で」
「なに言ってんだ。そんなに気になるなら俺が電話してやろうか?」
「やめてくれ。でも俺がしたいのは里美のことなんだよな。でも今の俺はなんにも出来ないからさ」
 新しいビールに智史が手を伸ばすのを見て、僕は今日もソファで寝る羽目になるなぁ、と思う。だけどそうなってもいいんだ。この話に付き合おうと思うのは僕だから。どれだけ情けない話でも、ここには束縛がないから。
 はぁ、と言う重い吐息を一つ吐き出して、智史は一気にビールを流し込む。
「俺はなにか出来る俺になろうと思うんだ」
「は?」
 意味が分からず素っ頓狂な返事をしてしまう。
「変わるって事だよ。俺は、なんかするんだよ。なにも出来ない俺のままで終わるの嫌だから」
「里美に、なんかするって事?」
「いや、別に迷惑をかけるようなことはしないよ。と言ってもなにもまだ決まってないしさ」
「なぁ、智史。前も言ったけどさ。次行くとかもいいと思うぜ?」
「けど、お前。前に言ったじゃん」
「なにを?」
「このままだったら後悔するって。俺も後悔したくない。次行くのもいいと思うよ。全然いい事だって俺も思う。でも、ケリつけてからじゃないと無理だよ。せめてそれくらいはしたいんだ」
 本当は次なんて考えてないんじゃないだろうか。ただ、そのケリが終わった後の事を無意味に明るくして、悪い考えを浮かばないようにしているだけじゃないだろうか。
「……そっか。ま、いいかもな」
 そんなのは僕の思い込みだ。
 智史はきっと大丈夫。たとえ後なんてなくても、ケリをつけるだけでも、智史は今の情けない自分を乗り越えられる。その後の事で悩んだらまたその時、僕も一緒に考えよう。
 なにを考えているんだろうか。どうしようかなぁ、なんて言いながら天井を見上げる彼にまぁ、飲めよと缶を手渡す。それがアルコールだと言う事を忘れてしまっているように口に含むその姿を見ながら、僕も同様に愛する人の事を思う。
 ラジオでは小休憩の意味も含めて彼女が好きだと言うアーティストの歌が流れていた。酔った頭には若干響くが智史は「いいよな、この歌」と軽く口ずさんでいた。

     

 翌日僕と智史は一緒に学校へと向かったが、そんな僕達を出迎えたのは教室前での何名かの言い争いの光景だった。
「うるさいんだから、抑えろって言ってんだよ」
「はぁ? お前らだって騒いでるじゃねーか」
「お前らほどじゃねーよ」
「お前が決めんなよ」
 僕達は訳も分からないままだが、中には仲裁をしようとしている面々もいて、そこには晶も含まれていた。僕は「どうしたんだよ?」と声をかけると、首だけこちらに向けた。見たところ、言い争っているのは僕達のクラスと隣の2-Bのようだった。
「いや、教室でさ、音楽を流してたんだよ。そうしたらうるさいから止めろって話になって」
 晶が僕に説明する。廊下から教室の中を見ると小型のミュージックプレーヤーと、配線で繋がれたスピーカーが床に乱雑に転がっていた。スピーカーのコンセントが抜かれていて今は音楽は流れていない。
 晶によると突然入ってきた2-Bの生徒がコンセントを無理やり抜き、スピーカーを蹴飛ばしたので、それに怒って言い争いへと発展したそうだ。
「お前らが元々静かにしてたらよかったんだろ?」
「だからっていきなりあそこまでやる必要ないだろ。頭おかしいんじゃないの?」
「もうやめようよ。切りがないよ。ちゃんと話し合おうよ」
「うるせえ」
 なんとか宥めようとしているのは小林だったが、熱くなってしまっているのか、どちらも聞く耳を持たない。
 僕と智史も場に入り、それからもしばらく罵りあいは続いたが、ややあってようやく本人達も落ち着いてきたようだった。
「もういいよ」
 その一言で皆が胸を撫で下ろす。せめてもう少し音量を下げてくれ、というやり取りと、なにも言わず蹴飛ばした事は悪かったと言うとその生徒と取り巻きは教室へと戻っていった。
「ごめんね、なんか。あいつちょっと元々イライラしてたから」
「いや、こっちも気をつけるようにさせるから」
 互いの教室から出てきていた仲裁者達が、そうやって労いの言葉をかけあっていた。僕達はぞろぞろと教室に戻る。
 教室は騒ぎのためか、糸を張ったような緊張のようなものがまだ解けきっておらずぎこちなかった。ただ、小笠原だけはいつもと同じで何事もなかったかのように、一人で窓の外を眺めていた。小林が湿った空気をなんとかしようと、明るく振舞っていたが、少し空回りしているようだった。見かねたのか智史が彼に合いの手を打つ。
 夜のバーベキューの準備でもしているからだろうか、昨日よりも少ない人数の中で、僕はふと窓の方へと歩み寄った。
「よう」
「……」
「……なぁ、聞いてる?」
「なに?」
「いや、特別なにもないんだけど」
 日の光を浴びても浴びても、皮膚の中にある何かがそれを奪い取ってしまっているのだろうかと勘繰ってしまうような、病的に白い横顔は僕に向けられず窓の外へと向けられたままでのそっけない返事に僕は戸惑う。
 彼女は隅へと追いやられている椅子の一つに腰掛けており、僕も一つ取り隣へ腰掛けた。
「なにしてるのかなと思って」
「……べつになにも」
「楽しいのか?」
 まるで単語を羅列しているだけのよう、と言う彼女の口調に釣られて僕の口数も少なくなっていく。彼女と話す時はいつもこうだ。二年生になり同じクラスになるまで僕は彼女の存在を知りもしなかった。それほど彼女は大人しく、自分の存在を主張する事がない。
「なにが?」
「なにがって?」
「楽しい? ってなんの事? こうやって学校に来るのが楽しいかって事?」
「いや、そこまでは言わないけど」
「家にあんまりいたくないから」
「そっか」
「柳君」
 小林がそう僕を呼んで振り向いた。彼女は相変わらず窓の外を見ている。
「どした?」
「今日の夜のバーベキューなんだけど、網とか用意しないといけないんだ。後でいいから手伝ってくれるかな?」
「あぁ、いいよ。別に今からでも」
「あ、ううん。後でいいよ、後で」
 その言い方と目配せで、彼が僕と小笠原を見比べているのに気がつく。
 もう少し話をしてあげて、とその表情は告げており、僕の返事を待つこともなく彼は離れていった。
 僕は参ったなぁ、と思うがそう頼まれてしまうといますぐ離れるわけにもいかない。
「小林君って」
「ん?」
「いい人よね」
 珍しく彼女からの発信とその内容に僕は若干驚いたが
「そうだな」
 と素直に返答した。
「疲れないのかしら、彼」
「けどそれが小林らしさじゃん」
「そうかしら」
 僕の記憶の限り、彼女と一番会話をしているのは小林だ。いつも一人の彼女を放っておけないのだろう。なのでもしかすると、彼女しか知らない小林の一面と言うのもあるのかもしれない。教室の中でにこやかにしている小林を横目で見てみるが、それがどんなものか僕には分からない。
「なんか気になる事でもあるのか? しんどそうに見えた?」
「べつに。ただ、誰にでもああやって出来るのって彼にとって簡単なのかどうか気になって」
 彼女はそれきり黙りこんだ。
 僕も彼女にするべき話題を見つける事が出来ず、しばらく二人でぼんやりと空を見続ける。もしかすると彼女が見ていたのは僕と違うものなのかもしれなかった。夏なのに、長袖のブラウスから伸びる手を――僕は彼女の半袖の姿を見た事がない――気だるそうに窓枠へとぶらさげているその姿は酷く年を取った老婆のようにも思えた。


「小笠原って苦手」
「まぁ、俺も苦手かな」
「いや、俺もそうだけどさ。なんかいっつも一人だからなに考えてんのかなって思ってさ」
「お前が声かけたの見てちょっとビビったもん。交代」
 僕は晶から荷台を受け取ってそれを押した。荷台には肉を焼くための網やレンガや薪などが乗せられている。近くのホームセンターから智史を加えた三人でそれを運動場へと運ぶ手筈になっていた。この今押している荷台もホームセンターにあったものだが、抱えていくより楽そうだと言う事で拝借してきていた。
「なに考えてるのか分からないとこあるよな、あの子」
「顔は可愛いんだけどな。もうちょっと明るくしたら絶対もてるのになぁ」
「晶はそればっかりだな」
 僕の皮肉に晶は、顔はめちゃくちゃ好みなんだけどなぁ、と尚も続けていた。
「けど毎日来てるよな、小笠原さん」
「家にいるのが嫌なんだって」
 智史の疑問に先程聞いたばかりの事を伝えると「なにか家に問題でもあるのかな」と首を傾げる。
「そこまでは聞いてないけど」
「でもそれで学校に来るって事は、学校に来るの楽しいって事なのかな」
「他に行くところないんじゃないかな?」
「いや、意外に学校の外に男とかいるかもな。外では意外と明るかったりとかするかもよ?」
「だったら晶が明るくしてやれよ」
「いやー、俺には無理っぽいな、うん。無理無理。小笠原とかは大人の男の方がいいんじゃない? あと小林みたいな面倒見いいやつとかかな」
「まぁ、確かにお前には無理だろうな」
 智史が煙草の煙を吐き出しながら、笑った。教室では流石に吸えないので僕達は外に出てはこうやって煙草を吸っている。
「晶はガキだからなー」
「康弘には言われたくない」
「晶は子供だからな」
「まぁ、そう言うな、智史」
「どっちかと言うと、俺が傷つくぞ、おい」
 荷台に手をかけたまま、軽く晶の尻の辺りを蹴る。大げさに痛がる振りをしながら「やめろよー」とはしゃいでいた。
「まぁ、あんまり気にしてもしょうがないって。俺達は俺達で楽しくやろうぜ。旅行の代わりと思ってさ」
「そうだな」
 校舎が見えてきて、最後に智史に荷台を渡し、僕は携帯で時計を見た。まだ暗くはなっていなかったが午後六時過ぎだった。僕達は新しく煙草を一本ずつ吸ってから運動場に入ると、もうそこには僕達の帰りを待っていたかのように人が集まりだしていた。
 集団の中に麻奈の姿を見つける。彼女は昨日言っていたとおり、ビニール袋を抱えていた。
「結構持ってきたなぁ」
「お母さんに話したらせっかくだからって言われて、なんか大量になっちゃった」
 苦笑する彼女から袋を受け取り中を見てみる。確かにかなりの量だが、人数を思えば消費できない量ではない。それぞれ持ち寄った肉や野菜などを一まとめにしてから、僕達はバーベキューを始める準備に取り掛かることになった。肉を切る係りや、焼くための網を作る係りなどをじゃんけんで決める事になり、
「じゃ、頑張ろう」
「…………」
「……おう」
 僕は小林と小笠原の三人で野菜を切る係りへと回された。
 麻奈は、智史と一緒に肉を切る係りのようで、晶と言えば慣れてないらしく、火をおこそうとしているものの悪戦苦闘しているようだった。
「じゃあ、僕はキャベツでも切ろうかな」
「じゃ、俺たまねぎでも」
「…………」
「えっと、小笠原さんはじゃあピーマン切ってもらえるかな」
「分かったわ」
 僕達は並べられた机の上に敷かれているまな板の上にそれぞれ野菜を置き、取り掛かることになった。一人暮らし生活がそれなりに長いので、僕はさっさと皮をむき、芯を取るとざくざくと包丁を入れていく。
「あ、やべ、涙出そう」
「大丈夫?」
 隣で同じく器用にキャベツを切っていた小林がそんな僕を見て笑う。
 僕は少し間を置こうと包丁を置き、反対側の小笠原を見る。
「…………」
 ピーマンを持って、微動だにしない彼女の姿があった。睨むようにピーマンを見ているが、ややあって包丁を手に取る。そしてそのまま、縦に包丁を入れようとしていた。
「ちょっと待てい」
 涙目でその無茶苦茶な動きに待ったをかける。
 彼女が「なに?」と言う顔でこちらを見るが、明らかに声をかけられるのを待っていたかのように手の動きがぴたりと止まった。
「お前、ピーマン切ったことないだろ」
「……ない」
「つか料理とかした事は?」
 今度は無言のまま首を横に振る。
「……先に言え、先に!」
 そう言うと、彼女は僕から目を逸らし再びピーマンと対峙しはじめた。僕はちょっと強く言い過ぎたのだろうかと反省する。
「あー、いや、わりいわりい。ちょっと教えてやるよ。料理した事ないんだったらしょうがないよな、うん」
「…………」
 だが彼女は無言で、僕の言葉を聞いているのかいないのかすらよく分からない。
 僕がどう言おうか迷っていると小林が助け舟を出してくれた。
「包丁はこう持つんだよ」
 ぐるりと机を回って彼女の傍に来ると、そう優しく声をかける。
 小笠原はそれを見よう見まねで真似をする。
「そうそう。それでピーマンなんだけど、まず芯を取らなくちゃいけないから、こうやって上をまず切って……」
 新しく一つ取り出し、小笠原は小林の動作を追いかけていった。
「中の芯を、包丁をまっすぐ入れて切り取って、種とかも取ったら、とりあえず二つに切ると。あとは適当なサイズにまっすぐ切ればいいよ」
 ゆっくりと分かりやすいように、切っていく小林だが、それでも不慣れなためおずおずと動く小笠原の手を僕ははらはらと見ていたが、やはり芯を切り取る事はうまくいったが、切り分けるところで、軽く指を切ってしまった。
「あー、まぁ、最初は誰でも失敗するってどんまいどんまい」
「…………」
 慰めようとそう声をかけるが、彼女は僕に対して無言を貫く。小林には短くてもちゃんと返事を返していると言うのに。
「あぁ、指切れちゃったね。絆創膏取ってくるよ。多分保健室にあるから」
「いい。自分で取りに行くから」
「そう? じゃあ、先に切ってるから行っておいで」
「うん」
 そう言い残すと彼女はゆったりとした足取りで校舎の方へと進んでいった。その姿だけ見るとまるで何事もなかったようではある。
 なぜか取り残されたような気持ちになり、僕は既に涙は止まっているものの軽く目を擦ると溜め息を吐いた。
「なんか……」
「なに?」
「お前、小笠原の対応うまいな」
 小林が首を振って笑う。
「彼女はちょっと照れ屋なだけだよ。柳君がうまいから恥ずかしかったんじゃないかな?」
 そういう問題だろうか?
「……あまり慰め、とかが好きではない、かな」
「慰めっつかフォローしただけのつもりなんだけどな」
「あとちょっと意地っ張りだから」
 ともかく彼の言葉を要約すると僕はちょっと言い方が無神経だったようだ。
 自分の作業へと戻った小林と黙々と野菜を切りながら、僕は自分と小林の言動にどれほどの差があったのかを考えたが結局正解など分かるはずもなく、ただただ、あれを意地っ張りで片付けてしまう小林に感嘆していた。

     

 それぞれの仕事が終わると、後は各自がバラバラに肉を焼く事になった。
 僕は智史や麻奈達数人で机を囲む。
「ビールがあったらなー」
 そうやってぼやくと麻奈と仲のいい女子に「オッサンみたいな事言わないでよ」とからかわれた。
「やかましいわ」
「家に取りに帰れば?」
「面倒くさい。つか帰ってる間に肉なくなるだろ。智史も飲みたいよな」
「いや、俺はいいよ」
「えー、智史くんもビール飲むの? 強いの?」
「え? いや、そんなには」
「こいつ絡み酒だから」
「そんな事ないだろ」
「あるよ。お前が覚えてないだけだろ」
「なんか意外だわ」
 皿が空き、ちょうど麻奈もなくなったようで朴達は一緒に網へと向かう。
「なんかキャンプみたいで楽しいね」
「分かる。片付け面倒くさいけど」
「皆でやったらすぐ終わるよ、きっと」
 僕は箸で肉を彼女の皿へと適当に取り分けた。
「ありがとう」
「遠慮すんなよ。お前の肉だし」
「けどあんまり食べ過ぎたら太っちゃうかも」
「気にすんなよ。それに肉とかもうあんまり食えないかもしれないしな」
 夏と言う季節もあり、生肉は冷凍でもしていない限り殆どのものが腐ってしまっていた。
 放置されたスーパーなどでは残っていた肉が腐臭を放っていたりしているところもあったらしい。なので今僕達の主食はインスタントや冷凍食品がメインのものになっていた。
「今日が五日か」
 誰かがそう呟いた。
「あと二十六日かぁ。なんかあっという間なのかな」
「どうかなぁ。一日する事ないと、結構長く感じるよね、一日って」
「私もそれ思った。なんか色々しようと思うんだけど、逆に色々してもまだ五日なんだって思うもん」
「……けどやっぱ三十一日になったらまだしたいことあるって思うのかなぁ」
「そうだよね。多分そうだよ。晶君とかやりたいことないの?」
「俺? そうだなぁ、皆とこうやって楽しくやれてたらいいかな」
「私、海に泳ぎにでも行こうかな」
「いいじゃん、行こうぜ。花火とか持ってさ」
「いいね、じゃあ皆で今度行こうよ。柳もさ」
「そうだな。いいかもな」
「麻奈もね」
「うん」
「死ぬってどんな感じだろうなぁ?」
「そんなの分かる訳ないじゃん。考えてもしょうがないでしょ。気にはなるけど」
「俺野球選手になりたかったなぁ」
「私は看護士になりたかった」
「……なんのために生きてるの? とか話したことなかった?」
「あったかも」
「大人になって、結婚して子供生んで、とかそれこそ野球選手とか夢じゃん。そういうのになりたいから生きるんだよ、って。じゃあ、あと少しで終わる今はなんのために生きてるのかなぁ?」
「……なんのためだろ」
「最後に後悔しないためじゃない?」
「あぁ、そうかもな。だからこうやって焼肉とかしてるのかな」
「じゃあ、やっぱ今もなにかのために生きてるんだ、俺たち」
「そうだよね、例えば――」
 誰がなにを言ったのか、と言う事を僕は覚えてはいない。
 ただ、終業式に絶望しか出来なかった僕達は、少し過去の僕達みたいだ。


 だけど、誰もがそう思っている訳じゃない事を、僕達は本当は心のどこかでは気がついていて――
 ――それに目を逸らして気付かない振りをしている事にも
 本当は気がついていたのかもしれない。

       

表紙

秋冬 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha