Neetel Inside 文芸新都
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リレー小説 「K」
7: 織姫/アタシ地獄

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 さて。少女に蓋をした俺ではあったが、何も性的な快楽を与えてやったワケじゃあない。
 マア当然だろう。彼女は憎むべき存在で、異性としての甘い感情なんざ、持ち合わせていないのだから。
 ではどうしたという。
 俺は少女に、何をしたというのだ。

 「ア、ア、ア、ア、ア、ア…………」

 磔刑された霊長目の女。
 今それには、人間性がカケラもない。
 形を変えてしまったのだ。
 ロボットのよう……或いは、時代背景に溺れた、情報のように。

 「……やあ、気分はどうだい?」

 話しかける。

 「ス、バ……すば…………素晴ら、しい……」

 言葉が返ってきた。
 フム。
 会話が出来る。
 要するに、アレもまだまだ人間というコトだ。

 アア……モノとは内容的にみて壊れにくい。
 どれだけ狂ってしまっても、一が一であるのは、宇宙においての真実だろう。

 「お…………お金……お、金……」

 切れた口を大きく開けて、彼女は再び、喋り始める。
 鳴き声と呼ぶに近いか。 
 ソイツは只管「金」を求めた。

 「……計画、的…………マネー……」

 「…………ホウ?」

 「そして…………返済……プラン…………」

 立派なもんだ。

 マアきっと、大脳辺縁系への侵食が進んだに違いあるまい。アア。
 俺の突き刺した触手とは、つまり多細胞生物の細胞情報を改竄する「バグ的要因」のそれなのだ。

 「キャッ……シュ……キャッシュバック…………シス、テム……」

 黄色いカラダ。これもまた生物。
 ハハ……小一時間ほど前は普遍的な人間だったというに。

 まったく、弱い。

 筋肉を鍛えるならば、ヒトは同時に、細胞を強化すべきだった。
 進化過程での怠慢。言わば銀河を無視する「安心」なのか。

 「…………」



 “お金で買えないモノはない”

 本当に……アノ言葉が、懐かしい。



 ……。


 「………………キミは、誰だい?」

 言いながら、彼女を捕らえる四つの金具を外した。
 もうこれは必要ない。
 理由なぞ、明白だ。

 「……お金」

 「お金という名前なのか……?」

 「お金…………違う……ワタシ、名前、ない……名前、知らない……」

 「そう……忘れてしまったんだナ……」

 「忘れ…………忘れ、た……?」

 「アア」

 壊したのは俺。けれど、作り直したのも俺さ。
 プログラム全てが俺色に染まったのだ。
 最早コイツは、俺のモノ。

 「キミは……怪獣だ……」

 「…………怪、獣」

 「ウン……とってもキュートな、怪獣なんだ」

 「…………」

 「……俺が、名前を付けてあげよう」



 アア……。

 この記念すべき、生命の誕生に。
 二人の門出を呪う…………誓いと、愛を。










 「今日からキミは……“コイン快獣、カネゴン”だ」










 そして、我々は地球を飛び立った。

       

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