Neetel Inside 文芸新都
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短編小説集
雨の日

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雨が降っている、雨雲と言う名が的確な空模様と視認できる程の雨粒が降り落ちて
モヤモヤした霧雨でも、気まぐれな時雨でも無い、心地よさを感じさせる程の雨だ。
灰色の日光が時間の流れを鈍らせて、光で感じる時間を忘れさせる。
無音の部屋に雨音が流れ込む、遠くから時折り聞こえてくる車が水を弾く音が
無意識の海に溺れそうな自分を雨音の部屋に連れ戻す。
流れ落ちてくる水滴は透明で純粋な雫なのに、かさなる事でノイズの様に視界を遮る。
そんな雨を眺めていると、世界から隔絶された別の世界から外を見ているようだ。

雨は止む気配を感じさせず、降り続く。静かなノイズを響かせながら、降り注ぐ。
雨の音は不思議だ。
電波のノイズに似た音でありながら、一定の波の音が心地よさを与えてくれる。
屋根にぶつかり弾ける音、空気を切り裂き落下する音、水溜りを砕き混じり合う音
雲の泣き声はさまざまな音色に変化を交え、その振動を響かせる。

空は相変わらずの曇天で、雲の流れを見せぬまま空を覆い鎮座する。
一面の灰色は青い空よりも低く、少しだけ世界を小さくする。
空を見上げると、放射線状に自分の視界を雨が過ぎ去っていく、雲の微妙なグラデーションが
視界を覆い、世界をさらに隔絶させる。
繭に覆われたような景色が光との壁となり、時間に取り残された感覚を残す。

雨はしだいに止んでいく、雨音の間隔が長く小さくなり、屋根から落ちる現実的な音色が
この隔絶されたかのような世界を戻していく。
雲の色彩が変わっていく、灰色の空が白く明るくなり、雲の合間から伸びてくる光源が
この時間が止まったかのような世界を戻していく。
雨は降り終わる、少しだけの別世界を残して。
見上げた空はどこか幻想的で、それが当たり前のように消えていった。

       

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