Neetel Inside ニートノベル
表紙

夕暮れの。
第五廻「相談」

見開き   最大化      

「つまりモッチーに明日告白したいけど、上手くいく自信がない…と」
「そういうことです」
俺は、自分の部屋に遥子を招いて、相談を受けてもらっていた。
眉間にしわを寄せ、
顎に手を当ててうーん、と唸っている様子を見ると、真剣に考えてくれているみたいだ。

 遥子と持田は結構な仲良しで、ちょくちょく一緒に帰っているところを見かける。
どうせ相談するなら、もっと早くにしていれば良かったな。
相談すれば心強い味方になってくれたのは想定出来たが、
なんとなくこいつには相談しづらかった。
からかわれると思ったから…かな。
それとも、長年の友人に自分が困っている姿を見せたくなかったから…。
まぁ、理由はいまいち分からないが、
遥子にこの相談を持ちかけるのは、抵抗があった。

「告白する時に、何かプレゼントするとか…、あの子の好きな物なら教えてあげられるよ?」
「プレゼントか」

やはり遥子に相談するのが正解だな。
あいつらより全っ然頼りになる。

 実は、山城達や遥子に相談を持ちかけるのは初めてではない。
これまで、タイムリープしてきて、何度か相談をしたことがある。
その度に、もっと早く相談を持ち掛けていれば良かったと思うのだが、
時間を遡ってたどり着くのは、決まって告白の前日。手遅れな話だ。
こうして、タイムリープ出来ていることすら奇跡なんだ。
贅沢は言えない。

「…ねぇ、裕次はモッチーのどんなところを好きになったの?」
「どんなところって…、なんで?」
「えっ、あの…、ほら、何かの参考になるかも知れないし…」
「参考になるかねぇ?」
「なるよ!多分!きっと!」
いつの間にか、遥子の顔がポッキーゲームが出来るくらいの距離まで寄っていた。
興奮しすぎだろお前…。
「いや、ちょっと近いぞ」
「あ、ご…ごめんっ」
はっ、として遥子は顔を遠退けた。
若干顔が赤くなっている。
やはり興奮しすぎだ。
遥子は、結構な恋愛話好きだから、仕方ないと言えば仕方ないか。
「持田の好きなところねぇ…」
「うんうん」
「おしとやかなところ、とかかな」
「ほぉー。裕次はおしとやかな子が好きなんだ」
ニヤニヤと嬉しそうな顔をしている。
くそ…、なんだか恥ずかしくなってきた。
「モッチーの好きなタイプは、男らしい人っていってたかなー?」
「なるほど、俺って男らしいか?」
「うーん、時と場合によるかな」
「そ…そうか。ひとつ頼みがあるんだが、いいか?」
 何故か遥子は、驚いた顔をしていた。
一拍置いて、遥子が口を開く。
「…どんなこと?」
「心細いから、一応俺が告白しているところを、影で見ていてくれないか?」
遥子は、その一言を聞いて、面を食らったような様子を見せた。
「おかしい…こんなこと今まで一度もなかったのに…」
遥子が蚊の鳴くような声で、何かを呟いたが、聞き取れなかった。
「…?。あ、嫌だったらいいんだぞ?
別に、お前に俺の頼みを聞き入れなければいけない理由もないし…」
「…嫌ってわけじゃないけど…、ただ…」
「ただ?」
遥子は目を閉じて、うつむいている。
点けていたテレビ番組が、20時からの番組に移り変わった。
「あ…もうこんな時間じゃん!ご飯食べてないし、私帰るね」
「ご飯くらい俺の家で食べていけばいいぞ?」
「ありがたいけど、早く家でやりたいゲームがあるから、やっぱり帰るよ」
 このゲーム中毒者め…。
遥子はカバンを肩にかけると、玄関まで送ってくれなくていいから。と言って階段を降りていった。
「あ、おじゃましてます」と言う声が微かに聞こえたのは、帰りにお袋に挨拶していったからだろう。
おじゃましましたー、とはきはきとした声とともに、玄関がガチャンとしまった。
俺の部屋から、遥子が家を出たのを確認すると、ふぅ、と一息ついて、ベッドに倒れこんだ。


「今まで一度だって、あんなことを言う時はなかった…。
裕次は毎回同じ様な行動をとってきたのに、どうして今回は…」
自宅につき、ベッドの上で大の字に寝ころんだ遥子は、ずっと考えていた。
「…今日はゲームする気になれないや」
遥子は、ゆっくりと瞼を落とした。

       

表紙

もろっこ 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha