泥辺五郎短編集
「アクロスティック」

「きつね」

黄色いしっぽを
つんととがらせて
練り歩くやつ


「コアラ」
この世で一番
あくびの回数が多い
楽な生き物


「犬」

いきがって
濡れている


「猫」

寝ているところを撫でようとしたら
殺された


「カラス」

柿の木に
ラフマニノフが
棲みついた


「たぬき」

大切な
ヌード写真に
金玉が


「コウモリ」

こんなにも
うるさい夕方は
もうたくさんだ
理由なんてない


「コップ」

これからは
つらいことがあるたびに
プリンを食べなさい


「鏡」

固くて
頑丈な
みみず


「時計」

トナカイが
喧嘩してたけど
いなくなった


「財布」

サイパンでは
インド人が
吹き飛びます


「妹」

石の中には
燃えるものがあり
うどんを茹でる時に
とても役立ちます


「男」

オーストラリアの
床屋では
コンビーフを売ってません


「名古屋」

奈良県には
ごっつい仏さんが
やたらといます


「氷」

この街は
おっさんばかりいる
理想郷です


「花火」

母が見たいと言っていたので
何もかもを投げ出して
ビルの屋上を買いました


「ミサイル」

みんないなくなった
さっきまでいたのに
いっぱいいたのに
ルビー色の空だ


「笑顔」

エイリアンさんが
ガラクタの海で
溺れています


「昨日」

キリストは
野糞に行く時
うんこ、と言った


「刀」

鍛冶屋が
丹念に
投げ飛ばす


「自由」

銃弾を
ゆっくりと
受け止めること


「扉」

とうとう行ってしまうのか
びっくりするくらいあっという間だった
来週にはもう忘れるね


「孤独」

こんなに
どきどきしているのに
腐ってるんだ


「夢」

ゆりかごの中で
目をつぶる


「迷路」

巡り巡って巡られて
いたずらに時を潰すのは
路頭に迷う下準備


「言葉」

こうして書いていることみんな
とりとめのないでたらめばかりだ
ばいばいまたねさようなら















「乳首」

ちょっとだけでいいから
唇で触れてくれ
びっくりするくらい感じるんだ