Neetel Inside 文芸新都
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文藝夏企画 作者変え&FN祭会場
黄金色(原作:灰色)/山優

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 今日は大学の卒業式だ。俺は、袴でバッチリ決めてきた。
 今、親友が隣に座っている。大学を楽しく卒業できたのも今となりに座っているこいつのおかげだよ。
 
 こいつに出会ったのは入学式の翌日、履修要項の説明を受けるために学部毎に分けられた教室でだ。
 俺は裏原系のファッションでバッチリと決めた。自分でもカッコよくできたと思ってた。そして、最前列の真ん中の席に座った。
 けど、俺は忘れちまった。シャーペンを。俺はどうしようか。どうしようか。と迷っていたが何も出来なかったんだ。
 すると、左後ろの席に座っていたやつが席を移動してきた。何で来たんかなと思ってたら、いきなりシャーペンを貸してくれたわけ。
 いいやつだなあって思ったよ。あいつは俺がこの話をするといつも謙遜するんだ。本当にいい奴だよ。
 
 俺はよく、あいつの家に泊まりにいった。俺たちは家族のように、いや家族以上に一緒の時間を過ごした。
 深夜に呼び鈴を鳴らしても、講義のない日の早朝に突然押しかけてもあいつは怒らなかった。
 こんなに、俺に優しく接してくれるのはあいつだけだった。みんななぜだか俺に冷たかったんだ。

 それに言い出すときりがないが、俺は何回もあいつに世話になったんだ。
 例えば三回生の時、俺の所属するサークルは学園祭でコロッケの屋台を出店したんだ。俺は食品係になった。だから張り切っていろんな食材を集めたわけ。
 でもよ、当日になってみたら食材が皆腐ってやがるんだ。メンバーの皆から責められて俺は泣きそうになっちまった。
 このままじゃヤバいじゃん。弁償させられる。そう思った。
 
 気が付いたらあいつに電話をかけてた。でもさすがに解決できるわけねえだろ。心の奥ではそう思ってた。
 でもよ、あいつは解決してくれんたんだ。
 解決方法を聞いたときはえ?本当にって思ったんだ。
 だけど、あいつは解決してくれたわけ、本当に。
 しかもあいつは俺のサークルに入ってくれたんだぜ。
 こんなにいい親友がいるかよ。少なくとも、俺はいなかったぜ。あいつに出会うまで。
 
 昔から、なぜだか俺には親友が出来なかった。それに友達も出来づらかった。要領が悪いせいなのかな。そう半ば諦めてた。

 俺は隣のあいつを見つめた。でも、こいつは今までの連中とは違った。俺と親友になったんだ。俺にも親友が出来るんだ。そう思った。
 俺はあいつにこの四年間の感謝の念を込めて、心の中で呼びかけた。

 きっと、ずっと、ずっと。いい友達でいようぜ。ずっと。

 いつの間にか、涙ぐんでいた自分が恥ずかしくなって俺ははにかんだ。ちくしょう、泣かないって決めてたのにな。

       

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