Neetel Inside 文芸新都
表紙

ある日の日
刀と想い

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 俺は、長月 史樹。今年高校生になった。
中学3年の時は色んな事があった。
夏には、昔いなくなった猫のユミが人の姿になって現れたり、昔の幼なじみ春美が転校してきたり。
冬には、俺が事故にあったり、春美がガンで亡くなってしまったこと。
こんなことがあったりしたけど、ユミの正体を母と妹の美夏に話すと母が。
「じゃぁユミちゃん。うちの子になりなさい」とか言い出しユミは、正式に長月家の子に俺の妹となった。
「わ~い。じゃ、今日からユミお姉ちゃんだ~」美夏は、喜んでいた。
でも、ユミが住む家は、春美の家だ。春美の最後のお願いだからだ。

今年の春、4月のことだった。
春美が俺のところに来て。
「史樹様実は私、修行に来たいのです」
ユミまだ恥ずかしく俺のことを『兄さん』と呼べないでいる。
「私は、もっと強くなって史樹様をお守りしたいんです」
ユミの目は、真剣だった。俺は、少し迷ったが。
「わかった。行ってこい!」
俺は、修行に行くのを許可した。母は、反対していたがユミの話に押され行くことを認めた。

ユミが修行に行っている間の俺の高校生活は、のんびり過ぎていった。
ユミが修行に行って4ヵ月が過ぎ、8月になり学校は夏休みに入った。
毎年祖母の家に行くのだが今年は、家でのんびりしたいと母に言ったので今この家にいるのは俺だけだ。
「やっぱり、一人でいると静かでのんびりできるな~」
外は、暑く。家の中は、クーラーでとても涼しく快適な空間になっている。
「ユミ、今頃何してるんだろ・・・修行かな」
ベットに寝転んで呟く史樹。
「暇だな~飲み物買いに行くか」
史樹は、服を着替え財布を持ち家を出る。
家の近くには、販売機がないためすこし離れたコンビニまで行くことになる。
「アクエリでいいかな」
コンビニを出る史樹を後を追うヤクザの男。
「あいつ、金持ってそうだな」

家まであとすこしのところで。
「おい!そこのお前!」
大きな声が史樹の後ろから聞こえて来た。
「はい?」
史樹は、後ろを振り返る。
そこには、ヤクザが立っていた。
「お前金だせ!痛い目にあいたくないだろ」
「金なんか持ってません」
史樹は、脅える。
「だったら力ずくだ!!」
ヤクザが右手の拳を、史樹に向けて殴りかかる。
「っ―――――――!!!」

目をつぶる史樹。
 が、一向に史樹が殴られる事はなかった、不思議に思った史樹はゆっくり目を開けると。
「おい!貴様!その拳をこのお方に、当ててみろこの名刀『一連夕薙』が貴様の首を切り落とすぞ!」
史樹の目の前に一人の女の人が、ヤクザと史樹間を割って入っていた。
「どうするんだ?貴様!」
その人は、腰まである長い黒髪を一つにまとめ、上は白、下は紺の袴を着ていてヤクザの首元に刀の刃を向けていた。
「うあぁぁぁぁぁぁ」
ヤクザは、悲鳴のような声を上げて走り去っていた。
「ヤクザは、弱い」
女の人は、刀を鞘にしまう。
「大丈夫でしたか?」
史樹に後ろ向けながら言った。
「あっありがとうございました」
史樹は、お辞儀をして言うと。
「お忘れですか、兄上」
「え?」

女の人が史樹の方と振り返るとその人は、ユミだった。
「うそ!ユミか?」
驚く史樹。顔つきは、そのままだが前みたいな優しいく可愛い感じのユミではなく、凛々しくたくましい感じのユミがいた。
「お久しぶりです、兄上」
ユミは、しゃがみ右膝を地面につける。
「修行を終えて帰ってきました」
まだ、すこし驚いてる史樹。
「なんか・・・ずいぶん変わったな」
「私の師匠に鍛えてもらいましたから」
「へぇ~ってか立っていいよ」
すっと、立ち上がるユミ。
「まぁ、歩きながら話そうか」
史樹が歩きだすと、右側に同じ速度で歩くユミ。
「その刀、本物?」
「本物です」
ユミの腰には、二本の刀が携えている。
「右側にあるのは?」
ユミの左には、さっきの刀があり右側にもう一本刀がある。
「この刀の名前は、妖刀『夜鬼牙』といいまして心に迷いがない時だけしか鞘から抜くことができないんです」
その妖刀は、持つ部分がすこしボロボロで鞘のところには、赤い竜の絵が彫ってある。
「先ほども、『夜鬼牙』を抜こうとしましたが抜けませんでした」
ガッカリした顔をするユミに史樹が。
「そんな、顔をするな」
頭をポンッと叩く史樹。
「抜けなくても、もう一本で助けてくれただろ。ユミなら『夜鬼牙』抜けるって」
「そうですね」
家が見えてきた。
「家に着いたぞ」
玄関を開ける。
「ただいま」
ユミが言った。
史樹が時計を見る。時刻は、3時だった。
「よし!」
何か決めたように史樹がリビングの窓を開けユミを呼ぶ。
「ユミ!ちょとこい」
「なんですか?兄上」
「実は、俺ユミと会う前に剣道やってたんだよ」
「剣道ですか?それで」
首を傾げるユミ。庭に出る史樹。
「俺なら『夜鬼牙』を抜くことができるかもしれないと思って」
史樹の発言に驚くユミ。

     


手を横に振るユミ。
「いくら兄上でも無理だと思います」
「やってみないと分からないだろ、ほら貸して」
ユミに両手を出す史樹。
「・・・分かりました」
ユミは、右側に携えていた『夜鬼牙』を史樹の両手に置く。
「よろしく頼むぜ夜鬼牙」
史樹は、庭の中央に行くと正座をし自分の前に置いて目をつぶる。
それから、時間が過ぎていく。
 二時間後。
史樹が目を開いた。
ゆっくり、夜鬼牙を持つと自分の前に立たせる。
「俺に・・・応えてくれ」
夜鬼牙を上に引っ張ると。

 スゥーっと刀の刃が見え夕陽の光照らされる。
「・・・夜鬼牙が抜けてく」
史樹が鞘から刀を抜く光景を見ていたユミが、驚きながら言った。
「どうやら応えてくれたようだな」
完全に鞘から夜鬼牙を抜いた史樹。
「とてもいい、刃だな」
史樹は、夜鬼牙を何度か素振りした後に。
「よし」
静かに鞘にしまう。
「ほら!やってみないと分からないって言っただろ」
史樹は、『夜鬼牙』をユミに返す。
「どうして、抜けたのですか?」
ユミは、『夜鬼牙』を受け取り、すれ違う史樹に聞く。
「どうしてって、それは心の中で夜鬼牙に話しかけてたからだよ」
椅子に座ってユミに、史樹が言う。
「話しかける?」
「そうだ!こっちが話して刀の方が応えるのを待ってたんだよ」
「なるほど、ちなみに兄上は、なんて言ったんですか?」
史樹は、夜鬼牙を見てからユミの顔を見て。
「俺に、抜かれてみないか?」
「そしたら夜鬼牙は、何て言ったんですか?」
「『お前の心の中は、迷いがないとても澄んだ心だな、その心があれば我を抜く事ができるだろう』って言われたから抜いてみた」
史樹は淡々と答えた。
「刀に話しかける・・・」
ユミは、夜鬼牙を見る。
「ユミにもそのうち抜けるよ」
ユミは、刀を握る。
「ところでユミの師匠って猫?」
疑問に思った、史樹に尋ねると。
「私と同じで人間にもなれます。その師匠がこの『一連夕薙』と『夜鬼牙』くれました。最初は、夕薙だけでしたけどこちらに帰る時に
私に、夜鬼牙をくれました。『お前ならこいつを使いこなせるそして、大切な人から離れるな』そう言ってました。」
「いい師匠をもったな」
「私は、兄上をお守りする」
ユミは、もう一度心の中で誓った、史樹をもう悲しませないで、傷つけさせないために。
「兄上。お母さんと美夏は?」
「あぁ、お婆ちゃんのところ」
「そうですか」
帰ってきたのに、二人に会えなかったのかしょんぼりするユミ。

翌日。
ユミは、カーテンを開け史樹の家を見ると、史樹の家の前に不審な女が立っていた。

 ピンポ~ン
史樹は、インターホンの音で目が覚める。
玄関に向かう。
「は~い」
玄関を開ける史樹。
そこには。
「おい!貴様!さっきから見ていたが、長月様に何の用だ!」
史樹の目の前には、女の子に夕薙を突き付けているユミがいた。
「おい!ユミよせ!その子は、俺の友達だ」
ユミは、夕薙を下す。
「失礼しました」
ユミが謝る。
「あ~ビックリした」
この子は、史樹のクラスメイトの、西 秋奈。
「秋奈どうした?」
「その・・・私と付き合って」
秋奈の言葉に固まる史樹とユミ。

     


秋奈の突然の告白。その場に風が吹き、秋奈の短い髪が揺れる。
「秋奈・・・冗談だろ?」
すこし、笑いながら史樹が秋奈に言うが。
「冗談で告白なんかできるか?」
秋奈の目が若干、涙目になっている。
「悪い・・・まさか、秋奈から言われると思ってなかったから」
「私は、本気だよ・・・本気で長月のことが好きで言ってるの」
史樹の顔から目を離さない秋奈。困ったような顔をする史樹。
「悪い・・・今は、何も言えない」
「何も言えないって・・・私とは、付き合えないってこと?」
「そうじゃない、突然のことだったからすこし考えさせてくれ」
そう言い残し史樹は、家に入って行った。

「あなたは兄上とは、合わない!」
秋奈の後ろにいたユミが言った。その言葉に後ろを向く秋奈。
「なぜ、合わないと言えるの?」
ユミを見る秋奈。
「あなたは、兄上の心を癒すことが出来ないからだ!」
「ユミって言ったけ、一つ聞いてもいい?あなたは、長月の何?」
右手を腰に当てキツイ目つきでユミを見る。
「私は、長月史樹の妹兼側近だ!」
「なるほど、それで刀を持っているのか」
「悪いですが、今日のところはお引き取り下さい」
「そうだな。あとは、長月しだいだな」
歩きだす秋奈。すれ違う時に秋奈は、ユミに耳打ちする。
「長月は、ユミのことどう想ってるんだろうな?」
「え?」
ユミが振り向くと秋奈の姿は、どこにもなかった。
「兄上は、私のこと家族と言ってくれた、それ以上のことは・・・」

昼。史樹のことが気になるユミは。
「兄上」
史樹の家に入り呼んでみたが。
『・・・』
史樹からの返事は返ってこなかった。ユミは、階段を上がり史樹の部屋の前に立つ。
「兄上。入りますよ」
ドアをゆっくり押して開ける。ベットに座ってマンガを読んでいる史樹がいた。
「あれ、ユミどうした。なんか用か?」
「別にたいした事では、ないのですが・・・そのどうするんですか?」
「どうするって何を?」
「何ってさっきの人に、告白せれたじゃないですか」
マンガを読むのを止めて、ベットから立ち上がりユミの前で立ち止まる。
「さっきの、秋奈のことか?決ってるだろ秋奈とは、付き合わないに決ってるだろ」
そう言ってユミの頭に手を乗せる史樹。頬を赤くするユミ。
「俺は、心の底から好きじゃなければ、付き合わないから」
「そう・・・ですか」
「もし付き合ったらどうするつもりだったんだ?」
「秋奈さんを斬ります。ただそれだけです」
史樹の顔を見るユミ。その目は冗談では、なさそうな目つきをしていた。

翌日の夜。雲一つもなく満月の月が、夜の街を照らしている。
午後9時。史樹の家のインターホンが鳴った。
「は~い」
玄関を開けると秋奈が立っていた。突然の訪問に驚いた史樹。
「こんな時間にどうした?」
「昨日の昼に私が言ったことは、忘れてくれ」
「え?・・・まぁ~そっちが言うなら別にいいけど」
「それで頼みがある」
一歩前にでる秋奈。二人の間隔は、30㎝あるかないかぐらい距離が近くなった。
「何だ?頼みって」
つばを飲み込む史樹。秋奈の口がゆっくり開き始める。
「私を長月の弟子にさせてくれないか?」
「え?何の弟子にだよ」
驚く史樹。さらに、距離をつめる秋奈。二人の顔の距離は10センチまでになってる。
「だって妹さんには、教えてるんでしょ刀持ってたじゃん」
「い~や、ユミはその・・・」
「お願い!剣術を教えて」
「わかった、教えてやる。明日の昼に来い。」
史樹は、しょうがなく秋奈に剣術を教えることにした。
「わ~い。ありがとう。じゃぁ明日ね~」
走り去る秋奈。その後ろ姿を見る史樹。
「これで、すこしでも長月の傍に長くいられる・・・そして、長月を私に振り向かせてみる」
秋奈は、心の中で誓った。

     


次の日。秋奈は、昼に史樹の家を訪れた。
「よろしくお願いします。師匠!」
「よし!じゃぁさっそく庭でやるか」
庭に移動するとそこには、いつもと同じ袴を着て腰に二本の刀を携えてるユミが正座していた。
「兄上。なぜ秋奈さんがいるのですか?」
立ち上がり史樹に近づく。
「それが、秋奈が俺に剣術を教えてくれって言って」
「そんな、兄上。私には、教えてくれないんですか!」
怖い顔をしてユミが史樹の顔を覗き込む。
「まぁまぁ、そんなに怒らない」
史樹に詰め寄るユミを秋奈が止める。
「悪いけどユミは、秋奈の後でな」
「わかりました、離れたところで見てます」
ユミは、二人から離れたところで椅子に座って見ている。
「ところで秋奈。お前が持ってるの何?」
秋奈が持っているのは、何か布に包まれていた。
「あぁこれか」
秋奈は、持っていた物の布を取るとそれは、刀であった。
「お前、刀持ってたのか」
「そう、私の家族は一人に一本持ってるんだ」
「スゲぇ~、それよく使うのか?」
「うん、時々お父さんに相手してもらってるんだ」
自慢するように秋奈は、言う。あまりの凄さに驚く史樹。
「親父さんに教えてもらえばいいじゃんか」
「何も教えてくれないんだ」
下を向き始めた秋奈。

「そっか分かった。本気で剣術教えてやるから顔を上げろ」
下を向いていた秋奈がゆっくり顔を上げ始める。
「ありがとう」
秋奈の顔は、笑顔になった。
「ところで師匠は、自分の刀持ってるの?」
「いや、持ってない」
「え?どうするの?」
史樹は、椅子に座ってるユミの方へ歩き出しユミに手を出す。
「ユミ、悪いんだけど『夜鬼牙』貸してくれ」
「あっはい」
夜鬼牙を史樹に手渡すユミ。秋奈の方へ歩きだしすこし距離をおいて止まる史樹。
「よし!やるか」
「分かった」
秋奈は、黒い鞘から刀を抜き始めた。真っ直ぐ刀を史樹に向ける秋奈。
「この刀は、名刀『黒涙』。師匠は、私の動きについてこれるかな」
「『黒涙』か言い名だ。こっちのは、妖刀『夜鬼牙』」
二人が刀の名前を言った後、二人とも動かない。
秋奈は、疑問に思ったそれは史樹が刀を抜かないからだ。

――どうして抜かないんだ?誘ってるのか?
秋奈が史樹に向かって走り出す。
「ハァ――――!!!!」
大きく振り上げ斬りかかる。
キシィ――――ン
秋奈の攻撃を史樹が鞘から抜いていない刀の状態で受け止める。
――どうして刀を抜かない
後ろに距離をとる秋奈。
――今度こそ!
今度は、下から上へと斬ろうとするとそこにいたはずの史樹がいない。
「遅い」
いつの間にか秋奈の後ろに、史樹が夜鬼牙を抜き秋奈の首元に、刃を付けていた。
「私の負けね」
刀をしまう秋奈。
「攻撃、相手との距離の取り方は、よかった。だが、なによりスピードがない」
秋奈に言い刀をしまう史樹。
「なるほど、スピード速さか・・・ありがとう今日は、これで帰るね」
秋奈は、手を振って帰って行った。史樹は、夜鬼牙をユミに返す。
「兄上、あんな速い動きができるんですか?」
ユミがさっきの史樹の動きが凄すぎて聞く。
「実は、さっきのは俺がやったんじゃなくて、夜鬼牙が俺の体を使ったんだよ」
「それは、どう言う事ですか?」
「つまり、俺と夜鬼牙が一体になって夜鬼牙が俺の体を使ったってこと」
「そんな事ができるんですか?」
「でも、うまくコントロールしないと自分の体が、支配されるから危ないんだ」
史樹は、そう告げると家に入って行った。
「私にもできのかな?」

その夜。ユミが寝ていると。
『おい、娘…』
寝ていたユミが突然目を開けた。
「何か誰か呼んでた気が・・・」
右を見ると壁に掛けている『一連夕薙』と『夜鬼牙』それぞれ光っていた。
『おい、娘。我は夜鬼牙。娘、我を抜きたいようだな』
「夜鬼牙の声なの」
夜鬼牙は、黒色のオーラを放っていた。
『そうだ、我を抜け。そして、我と一体になれ』
「夜鬼牙を抜く事が出来るのか・・・」
ユミは、ベットから立ち上がり壁に掛けてある『夜鬼牙』を手にしようとする。
『主いけません。今の夜鬼牙を手にしては、いけません』
『夜鬼牙』の上に掛けてある『一連夕薙』が金色のオーラを放ちながらユミに問いかける、が。
『我を抜けばさらに、力を手にすることができるぞ』
「力を手にすることが・・・」
ユミは、ついに夜鬼牙を手にすると。
『お前の体、貰った!』
ユミの体を黒色のオーラが包みこんだ。

夜。史樹は、ユミがいる春美の家に向かおうと家を出ると、春美の家の前でユミが立っていた。
「あれ?ユミなんで」
史樹が次の言葉を言おうとした時。
『死ね!長月史樹!』
刀を史樹に向けて襲いかかるユミ。
「そこまでだ!」
ユミの攻撃を史樹の顔寸前で誰かが受け止めた。
「散歩しててよかった」
受け止めたのは、秋奈だった。
「なんでこんなことに?」
「俺にも分からない」
『チッ』
舌打ちをして距離をおくユミ。
「おい!ユミなんのつもりだ!」
『ユミ?悪いが今は、夜鬼牙だ』
「何?夜鬼牙だと!ユミに何した!」
『なに、こいつの体を貰っただけだ』
いまいち、分からない秋奈は、刀をユミに向けて史樹に聞く。
「長月!どうなってるんだ!」
「つまり、目の前にいるのは、ユミではなく刀の夜鬼牙がユミを支配してるんだ」
二人の前には、邪悪な黒いオーラを身にまとった夜鬼牙に支配されたユミが不気味に笑っていた。

     


『さぁ、どうする?長月史樹』
「どうすれば、どうすればユミを助けることができるんだ!」
両手の拳を握り、何もできない自分に腹がたつ史樹。
「そうだ、一連夕薙なら助ける方法を知ってるかもしれない」
「どうするんだ、長月。」
「ユミの家に入る、秋奈すまないが夜鬼牙の攻撃を防いでくれ」
史樹は、秋奈の顔を真剣な顔をして見る。秋奈は、少し鼻で笑ったあと。
「早めに戻ってきてくれよ、私一人じゃ長くは持たないぞ」

 睨み合う三人。
「行くぞぉぉぉぉぉ」
秋奈が夜鬼牙に向かって走り出す。秋奈が刀を振り落とす、片手で防ぐ夜鬼牙。
「今だ!行け!」
秋奈が夜鬼牙の動きを止めて。その後ろを史樹が走り去る。
『何を企んでいるか知らんがお主に我は、倒せないぞ』
「そんなのやってみないと分からないぞ」

「どこにあるんだ?」
探し回る史樹。あっちこっち部屋を周り寝室のドアを開けた。
『お主は?』
寝室に入ると金色のオーラを放っている一連夕薙があった。
「長月だ。頼むユミを助ける方法教えてくれ」
『主を助けるには…』
その時。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ」
外から秋奈の苦しむ声が聞こえてきた。史樹は、一連夕薙を持って外に飛び出した。
『遅かったな、まぁコイツにしては、頑張った方だな』
史樹の目の前には、髪を引っ張られ、体中がボロボロで、秋奈の傍には半分に折られた刀の『黒涙』があった。
「秋奈を離せ!」
『よかろう、そもそもコイツには興味はない』
夜鬼牙は、髪を引っ張っていた手を離した。地面に横たわる秋奈。どうやら気絶しているようだ。
「夕薙、どうすればいいんだ!」
史樹は、鞘から夕薙を抜き夜鬼牙に向ける。
『それは・・・夜鬼牙を殺すのです』
「それは、刀を折れってことか?」
『違います。今の夜鬼牙の体は主の体、つまり・・・主の心臓を突き刺す事です!』
「そんな・・・」
夕薙から聞かされすべての力が抜けた史樹。史樹の顔をじっと見る夜鬼牙。
『今度こそ死ね!長月史樹!』
夜鬼牙が史樹に向けて刀を突き刺そうとしてくる。
『長月様』
夕薙が史樹に声を掛けるが下を向いたまま反応しない史樹。
『わぁぁぁぁっぐぅぐぅぐぅ』
夜鬼牙が突然、頭を抱えて苦しみ始めた。
『出て来るんじゃねぇ』
夜鬼牙がひとり言のような事をしゃべり始めた。すると夜鬼牙の動きが止まった。
「兄上、兄上。顔を上げてください」
聞きなれたその声に、史樹が顔を上げる。
「その声、ユミか?」
「はい、兄上。今は夜鬼牙を止めていますが長くはありません」
史樹がユミの方へ歩くすると。
「それ以上来ないでください」
止まる史樹。
「私は、これから自分で命を絶ちます」
ユミは、刀を自分の心臓に向ける。
「やめるんだ、ユミ!」
夕薙を置き、ユミがやろうとしている行動止めようとするが。
「さようなら。史樹様」

ユミは、刀を自分の心臓に向けて突き刺した。
「ユミ!!!」
史樹が倒れこんだユミに掛けより、心臓を貫いている刀を抜く。
「ユミ!ユミ!」
史樹は、ユミの名前を呼ぶがユミの目は開く事はなかった。
しばらく、すると。
「こっこれは」
ユミの体が金色、色に輝き始めた。
「どうなってるんだ」
ユミの体だけでが光ってはいなかった。
「夕薙、夜鬼牙、黒涙も」
史樹があたりを見ると、三本の刀がユミと同じように光っていた。
ユミの体、三本の刀は、細かい光の玉になり空へと消えて行った。

「逝っちまいやがった・・・」
史樹は、しばらく空を見ていた。
「あっそうだ。秋奈」
史樹が秋奈の倒れていた方へ顔を向けると。
「あれ?いない」
さっきまでいたはずの秋奈の姿は、どこにもなかった。
「最後にいい思い出ができたぜ、ありがとう。長月」

「ユミに色んなこと教えてやりたかったな」
その日、大切な人をまた失ってしまった史樹。だが、今回の事で彼の心は、強くなったであろう。

       

表紙

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Neetsha