Neetel Inside 文芸新都
表紙

書きます、官能小説。
第12話「第4話掲載後、第5話掲載前」

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「な、いったい、なにを」
「ふふふ。あおいさんったら、あんなことを望んでいたのですね」
 
 ぷつり。あおいのシャツの、第一ボタンが外された。
 
 
 
 
 第12話「第4話掲載後、第5話掲載前」
 
 
 
 
 あおいとみひろは徹夜で打ち合わせをしていた。めずらしく意見が合わず、口論になる手前でどちらかがなだめ、収まる。そんなことを繰り返しているうちに、朝日が昇っていた。
 
「ちょっと寝させてもらうよ‥…」
「はい、おやすみなさい」
 
 目をごしごしと擦りながらあおいは自室に向かう。みひろはというとずっと書類をまとめていた。そんなみひろを見て、あおいはよくできた編集者だなと感心した。
 自室に戻り、ベッドにダイブ。あっという間に深い眠りへ沈んでいった。
 
 その、数十分後。
 
 ぎし、ぎし。
 
 奇妙な音が鳴っていた。しかし、あおいは気づかない。
 
 がちり。
 
 あおいの手に手錠がかけられた。熟睡していたあおいも、さすがに異変に気がついた。
 
「な、なにっ……?」
 
 拘束された手を動かす。当然びくともしない。そんなあおいに、ずしりと何かがかぶさった。
 柔らかな感触。温かな体。うっすらと良い香り。見知った顔。
 
「おはようございます、あおいさん」
 
 みひろが馬乗りになっていた。
 
「き、キミ、これはどういうことだい?」
 
 おそるおそるとあおいは尋ねる。みひろはそれにニヤリと笑う。
 
「マンネリガールの第4話。実に素敵な女性同士のお話でしたね。由理ちゃんの、加悦を想う気持ち。リアルでしたね、すごくリアルでしたよね」
 
 
 
「あれは、私へのプロポーズ、ですよね?」
 
 
 
 さすり。みひろはあおいの頬に触れる。
 
「な、いったい、なにを」
「ふふふ。あおいさんったら、あんなことを望んでいたのですね」
 
 ぷつり。あおいのシャツの、第一ボタンが外された。
 
「あう、やめ、やめてっ……」
「やめませんよ。もう、我慢できません」
 
 ぷつり、ぷつり。みひろはボタンを外していった。
 
「あおいさん、大好きです」
 
 
 
 
「はい、オッケー」
 
 あおいの言葉に、みひろはさっさと手錠を外した。拘束がとけ、あおいはボタンをとめる。
 
「ふーむ、知り合いで、しかも演技とはいえ、やっぱり怖いものだなぁ」
 
 この一連のやりとりは、あおいの言うとおり演技だった。しかも台本まで用意し、軽く演技指導さえあった。
 みひろは人には語れない黒歴史のおかげで、声の演技だけは完璧だった。
 
「本当にこんな展開にするんですね」
「まあね。マンネリ解消を考えたら、こんなプレイぐらいしてもいい気がするし」
 
 それにしても。と、あおいは続ける。
 
「思っていた以上に怖くて不安だったよ。もう少し心理描写とかを考えたほうがいいかもしれない」
「内容的には、最初っからそういうプレイ、と明かしているんですか?」
「いや、前編はミスリードっぽく、あたかもレイプされているような構成にするつもり」
 
 あおいは第5話を渡す。
 
「……」
「加悦の心理描写や背景の表現とかを修正するからけっこう変わるかもしれないけど、おおまかな流れはそんな感じ」
「……」
「そして、第5話から起承転結の“転”だよ。第1話が“起”、第2話から第4話が“承”。いよいよ“転”の始まり。
 第5話から第7話までは劇的な展開を用意しているよ」
 
 みひろは言葉を失っていた。
 これは、大変ショッキングな内容だった。
 
「これ、前編だけなら、フツーにレイプされているじゃあないですか」
「ふふふ、たしかにそう読めるね」
 
 なぜか楽しそうなあおい。
 
「でもね、よく読めば不自然なところがあるんだよ?」
「え、えー?」
「たとえばここ。加悦の服装」
 
 みひろはその部分を読み返した。
 
「寝る前にこの服装は不自然じゃない?」
「たしかにそうですね」
「さらに言うと、部屋の照明」
「あっ」
「加悦は豆電球をつける派、つけない派かは明確にしていないけど、この辺りの表現で照明の具合がわかると思う」
「そこまで言われるとわかりますが……」
「まあ、ここは表現遊びなところがあるから、そこまで重要視していないよ。ヒントなしで後編で驚かせる、というのはフェアじゃないと思っているだけ。むしろ前編で読者にショックを与えることができれば、後編の切れ味が増してくる」
「……なるほど」
「まあこのへんはおまけだよ。大事なのは……タイトル」
「タイトル、ですか?」
 
 今までのタイトルと比べれてみると、たしかに毛色が違った。
 
「第5話は、他と比べると誰かの言葉っぽくなっている。これは加悦の言葉なんだ。そしてこのタイトルは、第1話に対する、現状の答えでもある」
「ほ、ほー……」
「これはね、加悦がこの時点で出したマンネリへの答えなんだ。それを、タイトルで表してみたんだ」
「うーん……」
 
 これ、気づかれるのだろうか。
 
「これも、この時点では気づかれないと思う」
 
 あおいさんはエスパーですか?
 
「でもこれは時限式の演出。のちに必ず気づくような、さらなる演出を考えている。だから、今はこれでいいよ」
「……そうですか」
 
 なんだかよくわからなかったけれど、あおいの中ではすでに演出が決まっているらしい。特に問題はなさそうだったので、みひろは何も言わなかった。
 
 

     

 
★第4話フィードバック
 
 
「では始めましょうか」
「いやー、最近はこれが楽しみだよ」
 
『これがガチエロでなくて何なんだw』
 
「おそらく“めざせガチエロ”というコメントに対する意見でしょうね」
「うん、私もそれはどうかと思うよ……」
「ですので“ガチエロです”に変更してみました」
「うーん、まだマシなのかなぁ」
 
「あと、こんな反応がありました」
 
『あおい先生、いつも楽しく拝読させていただいております』

「わあ、これはご丁寧にありがとうございますっ」
「ありがとうございます。続けますね」
 
『今回の由理の加悦への思いがとてもリアルに感じて、先生にもこういった経験があるんじゃないかと思ってしまいました。まさかねw』
 
「たしかにすごくリアルだけど、そんなことはないよ」
「ふふ、そうですね。やっぱり2人で遊びに行ってネタ集めが効果ありましたね」
「そうだね。あれはすごく良かったよ」
 
 すすっ。
 
 みひろはあおいから距離をとった。
 
「……何で離れたの?」
「念のためです。さて、続けますよ」
 
『女の子同士っていいよね』
 
「世間では女性同士の恋愛のウケはいいようですね」
「へー、そうなんだ」
「今回の反応はいつになく多かったです。需要は女性同士かもしれませんね」
「ほほー、それは興味深い」
「あと、これですね」
 
『百合ちゃん…じゃなくて由理ちゃんが自慰に耽る描写があれば抜けたな 』
 
「な、がっ」
「こちらの方は名前の由来に気づいたようですね。それにしても大胆な発言ですよね」
「う、うう……」
 
 あおいはがくりと崩れ落ちてしまった。
 
「あ、あおいさん……?」
「そうか、自慰の描写か……必要だったのか……!」
「そんなに落ち込まなくても」
「感動する話を書いて泣いてもらう。ホラーを書いて怖がってもらう。それと同じで、官能小説を書いて、それで性欲を駆り立て、そして自慰をしてもらう。それは最高の喜びなんだ! それなのに……その機会を……失ってしまった……」
「今までも自慰した人、いますよ。きっと」
「それはそれとして、この反応をした人は……自慰をするタイミングを失ったんだ……! 力足らずで申し訳ない……!」
 
(うわー、さすがのプロ意識もここまでされると引きますねー……)
 
 

     

 
★おまけ1「あおい→みひろ」
 
 
「あと、こんな反応がありました」
 
『あおい先生、いつも楽しく拝読させていただいております』

「わあ、これはご丁寧にありがとうございますっ」
「ありがとうございます。続けますね」
 
『今回の由理の加悦への思いがとてもリアルに感じて、先生にもこういった経験があるんじゃないかと思ってしまいました。まさかねw』
 
「ははは、これはおもしろい反応ですねー、あおいさん」
「そ、そうだね」
「私たちはネタ集めでデートっぽいことしましたけど、そんな感情は微塵もありませんでしたねー。はははっ」
「そうだね……」
「うはw超うけるw」
 
 みひろは笑う。しかし、あおいは笑っていない。
 うつむいている。
 
「あおい、さん……?」
 
 ぼろっ。
 
「どうして……」
 
 ぼろぼろっ。
 
 あおいは涙を流す。
 
「なんで、そんなこと、言うの……?」
「え、あおいさん、え?」
「あの日のデート、すっごく楽しかった。
 もっとデートしたいと思っているのに!
 私はみひろさんといっしょにいれて嬉しいのに!」
 
 あおいの勢いに、みひろは押されつつある。
 
「あの、え?」
「私は、わたしは、みひろさんのことが、すき、なの!」
 
 ……なんてこった。
 
 まさか、現在進行形の経験だったとは。
 
 
 
 どうしてこうなった。
 
 

     

 
★おまけ2「みひろ→あおい」
 
 
「あと、こんな反応がありました」
 
『あおい先生、いつも楽しく拝読させていただいております』

「わあ、これはご丁寧にありがとうございますっ」
「ありがとうございます。続けますね」
 
『今回の由理の加悦への思いがとてもリアルに感じて、先生にもこういった経験があるんじゃないかと思ってしまいました。まさかねw』
 
「と、いう感じですが……」
 
 ちらり。みひろはあおいは見る。
 
 みひろは出会ったころから、ずっとあおいに想いを寄せていた。
 中性的な顔立ち、メリハリのないスタイル。さばさばした中に女性らしい一面のある性格。そんなあおいが、すごくすごく好きだった。
 そう考えていたところに、こんな反応。これはいい機会だった。
 
「あおいさんは、どう思いますか?」
 
 どきどき。
 
 どきどき。
 
「そうだなー」
 
 どきどきどきどきどきどきどきどき。
 
 
 
「ま、そんなこと、ありえないよね」
 
 
 
 玉砕。
 
 

     

 
★おまけ3「右脳か左脳、どっち?」
 
 
「うちの出版社の派生みたいな感じで、文芸チャットというのがあるんです」
「チャットというと、ネット上の言葉のやりとり、だっけ?」
「はい、それです。まあ文芸中心の交流チャット でも文芸じゃない方、読者の方もおk、なところです。
 数日前、こんな話題が出たんです」
 
 http://note24book.com/note/notekakikata.html
 
「右脳と左脳の判定?」
「そうですね。どっちを使っているか調べよう、ということですね。けっこう話しが弾んだらしいです」
「ふーん」
 
 あおいはじーと見る。
 
「反時計回り。左脳ということは理性的、てところかな」
「あれ、知っているんですか?」
「人物を考えるにあたり、脳科学や心理学は少しぐらい勉強しているんだよ」
 
 
「たしかに、右脳と左脳で役割は違うけれど、私は性別による脳構造の違いに興味があるかな。
 女性は感情的、男性は理知的。なんて言うけれど、これは当然脳構造による差。
 女性は感情と理性の伝達が早い。つまり、ぱっと思いついたことを冷静になって考える前に、発言するということがたびたび見られる。
 男性はその逆で、感情と理性の伝達が……悪い、と言ったらダメかもしれないけど、思いついたことを一度クッションをはさんで発言する。
 ほら、女性と男性と口喧嘩って、女性が勝つこと多いよね? これは女性は矢継ぎ早に発言できることに対し、男性はいちいち考えてから発言するから、後手後手になるんだ」
 
 
「そうなると、男性で右脳、女性で左脳というのは、なんだかミスマッチですね」
「どっちの特性も持っているから、一番柔軟にやっていけると思うよ。ところでキミはどっちだった?」
「私ですか? 右脳でしたよ」
「へえ、意外だなぁ」
「そうですよねー、これでも私、けっこう理性的なんですけどねー」
「はははは」
「うふふふ」
 
 

     

 
★おまけ4「もう少し続けてもらった」
 
 
「はい、オッケー」
 
 あおいの言葉にも、みひろはやめる気配はなかった。ぷつぷつとボタンを外す作業に専念している。
 
「ちょ、キミ、もういいよっ」
「まあまあそう言わず」
 
 ぷつり。すべてのボタンが外れてしまった。あおいのおうとつのない体が晒された。
 
「これ、やめ、やめろっ」
「きゃ、怖い」
 
 がしゃがしゃと暴れるあおい。みひろはそんなあおいをやんわりと押さえこみ、平べったい胸に手を置く。
 
「ドキドキ鳴ってますよ? 緊張しているんですか?」
「怖いんだよ! もういいって言ってるのに!」
「そうですねぇ……でも、すぐに貪欲な雌になりますよ」
 
 ちろり、ちろり。あおいの肌に舌が這う。その舌はあおいの肌、ちょっとした膨らみ、そして突起へ近づいていく。
 
「やだ、やだぁ……」
「イヤですか? でも、体はそう言っていないかもしれませんよ?」
 
 みひろは堅くなりつつある突起を指で弾く。あおいはその衝撃に合わせ体を震わせる。
 
「くぅ……バカにして……」
「バカになんてしていません。可愛いい胸ですよ? 私、胸の小さな女の子は大好きです」
「言ったな、正直に言った、なぁ……」
 
 みひろの愛撫に言葉も途切れ途切れ。あおいの息は荒くなっていく。
 そろそろ頃合い。みひろは胸を弄っていた手を下ろしていく。
 
「さあて、あおいさん。下着は何色で、す、か?」
 
 みひろの手が、あおいのジーンズにかかり、力が込められる。
 
「や、やだ、そこは、そこ、やだっ」
「ふふふ、イヤですか? やめてほしいですか?」
「やめ、今すぐ、やめてっ」
 
 その言語が。
 
「はい、わかりました。終わりましょう」
 
 みひろの止めた。手錠を外し、ボタンをすべて留めた。
 
「あ、え……?」
「やめましたよ? さて、私は仕事に戻りますね」
 
 何もなかった。そんな様子で、みひろは部屋から出ようとしている。
 だめ。
 
 それは、嫌だ!
 
「待って!」
 
 みひろの背中に浴びせる声。あおいには見えないように浮かぶニタニタとした笑み。
 
「どうしましたか?」
 
 みひろは振り向かない。
 
「あっ……なん、でもない」
 
 あおいには勇気が足りなかった。あおいは情欲のはけ口をまだ知らなかった。
 
 

       

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Neetsha