Neetel Inside 文芸新都
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書きます、官能小説。
第15話「第7話掲載後、最終話前」

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「これが、最後のネタ集め」
 
 
 
 
 第15話「第7話掲載後、最終話前」
 
 
 
 
「さて、マンネリガールも残すところあと1話。最終話では唯一のテーマ『マンネリの解消』に対して、加悦が答えを知る。そんな話しを考えている」
 
「と、言うわけで」
 
「これが、最後のネタ集め」
 
 
 
「マンネリを解消するには、どうすればいい?」
 
 
 
 最後のネタ集め。みひろはその言葉の重みを感じていた。
 今日のネタ集めのことは、ある程度予想していた。結局のところ、マンネリガールはマンネリを解消しようと四苦八苦する話で、その過程で官能シーンが盛り込まれている、という構成。
 つまり、単なる手段であっても最終話ではそれなりの答えを出したい、というのが、あおいの考えているところだろう。
 しかし、みひろにその答えを出せそうになかった。自身に恋愛経験がないため、いまいちマンネリというのがわからなかった。
 ふと、自分の経験に置き換えることにした。すごく好きなアニメやマンガがあったとして。それにものすごくハマって、録画したりグッズを買い漁ったとして。
 それが最終話を迎えて。がっかりして、残念がって。でも、しばらくすると来期の作品が始まり、それにハマって。それの繰り返し、繰り返し。
 もっと近いところで考えれば、長期連載されている作品を、途中で飽きてしまう。これだろう。どれだけ面白くても、引き伸ばしされた展開に無理を感じて、ふっとフェードアウト。
 ……どうも違う。そんな気がした。
 どんなものでも、『飽き』というのは訪れる。それがアニメやマンガなら、すっぱりやめてしまえばいい。それが男女の関係となると……
 それも、すっぱりやめてしまえばいい? それは違う。みひろは自分の親を思い出す。結婚してかなりの年数が経っている。飽きないのだろうか。愛(笑)とやらは、それを超越するのだろうか。
 
 ……わからない。
 
「すみません、わかりません……」
 
 妄想を語るにしても、それはそれで答えが出ていない。
 
「そっか、わからないのか」
 
 あおいはテーブルにメモとペンを投げ出した。仕草は粗暴だが、その顔は少し満足そうな顔だった。
 
「私も、わからない」
 
 みひろはうつむいていた顔を上げた。
 
「過去に何人かと付き合ってね、付き合い始めたころはすごくすごく好きなのに、次第に、そう、なってくるんだよね。
 結局、刺激が足りなくなる。それはわかる。ならその刺激はどうすればいい? ……というのは、作中で加悦が2話から7話までがんばって、その刺激をどうにかしようとしていた。
 でも3話や5話で加悦が墓穴を掘って、失敗」
 
 あおいが最終話をみひろに渡す。
 
「わからなくても、マンネリガールという作品の中では、何かしら答えを出さないといけない。
 ……変なことを言うけどね、ずっとずっと、私は加悦といっしょに考えていた」
「それが、これですね」
「そう。すごくありきたりな答えかもしれないけど、加悦が最もほしかったのって、それなんだよね。
 もっと早く素直になって、昴と話しをしていれば……極端に言えば、2話から7話は不要で、1話と最終話だけで十分なんだよ」
「青い鳥みたいですね」
「まさしくそうだね。すごく簡単で、しかもそれは昴が持っていて、いつでも与えてくれたのに。あれこれ考えるから、傷ついたりする。客観的に見ると、加悦はとてもバカだけど……すごく可愛いよ、すごく、すごく」
 
 子を可愛がる親のように、あおいは言う。
 
「それにしても由理、すごくいいキャラですね」
「そうだよ。由理は作中で最も賢い、いい女だよ」
 
 みひろは読み進め、後半に差し掛かったところで、止まった。
 この展開は、そこらの官能小説でおおよそありえない。
 今までなんらかの形で最後までヤってきていたのに、まさか最終話で最後までヤらないなんて。
 
「これが、『夏目あおいの官能小説』ですか?」
「私は、それは断固として譲らない」
「……なるほど」
 
 出会ったころなら反対していただろう。けれど今では、これが『夏目あおい』なんだろうと、思えた。
 まったく、第7話といい、どうして無難にできないのだろうか。いや、これがこの人のいいところ。
 ……この人と、知り合えて良かった。
 
 みひろはさらに読み進め、そして読み切った。
 
「最終話のサブタイトルに対する言葉が、最後のこのセリフですね」
「うん。最終話のタイトルは第1話と似せて、それに対して加悦が返事をする。
 これで、マンネリガールは終わり」
 
(ああ、終わるんですね……やっぱり、寂しいです……)
 
 

     

 
★第7話フィードバック
 
 
「さて、勝負と称した第7話の、読者の皆さんの反応です」
「……ドキドキ」
 
『作者コメント見てどんな展開になってるのかとビクビクしちゃったよ。率直に言わせてもらうと特に何も思わなかった』
 
「……ダメだったかぁ」
「まあ、全員が全員、そう思ったわけではないはずですよ?」
「でもダメだよ……皆に、同じように感じてほしかったなぁ……」
「……続けますね」
 
『5話の前半と後半の展開を考えると、復讐展開になるのかなあと』
 
「おもしろい考え方だね」
「予想してもらえるというのは嬉しいものですね」
 
『ビッチと言わざるを得ない』
 
「ようやく加悦にがっかりする系の反応だっ」
「以上が前編での反応です(ビッチという言葉の意味は知っているのか……)」
 
『一難去ってまた一難・・・』
 
「ここからが後編です(初代プリキュアのOPでこんな歌詞があったような)」
「ちゃんと由理が障害と思ってもらえている、やった!」
 
『ハァハァハァハァハァハァハァハァ……ふぅ……あ、区切り記号のセンスが素敵だと思います』
 
「…………」
「あおいさん?」
「お、お勤め、ご苦労様です……」
(え、なにその反応。顔真っ赤にしちゃって。ひょっとして、異性からの下ネタに弱いとか?)
「く、区切り記号は、回想の始まりと終わりを、意識してて……えっと、うまく、区切れていたようで、良かった、です……」
(うわー、動揺してますねー。なるほど、こんな反応ならセクハラしたくもなりますね)
 
 

     

 
★第15話の続き「あおいのお誘い」
 
 
「ところで、掲載のことなんだけど、あれってネットが使えればどこでもできるの?」
「そうですね。私は社に戻って掲載していますが、極端に言えば自宅でもできますよ」
「そっか。なら一安心」
「……どうかされました?」
「最終話の後編の掲載だけどさ、ここでやってくれない?」
「あおいさんのパソコンからですか? はい、構いませんが……」
「でね、時間は、夜にやってほしい」
「え……?」
「できれば日付が変わるころがいいな」
「え、え……?」
 
「えっと、ね……」
 
 
 
「マンネリガールが完結した夜、ずっと、いっしょにいてほしい」
 
 

       

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