Neetel Inside 文芸新都
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書きます、官能小説。
第16話「完結」

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『完結しました。夏目あおい先生の次回作にご期待下さい。』
 
 
 
 
「終わり、ました。最終話の後編、たしかに掲載できました」
「そっか……終わった、終わっちゃった」
「……お疲れ様でした」
「私は何もしていないよ。強いて言えば、加悦と昴のことを書き留めていただけ」
「それでも、お疲れ様でした」
「強情だなキミは」
 
 
「あとがき、いらなかったんですか?」
「最初から最後までが作品なんだから。作者がしゃしゃり出ていいようなところはないんだよ」
「硬派ですね……最後ぐらい、いいような気がするんですが」
「最後の加悦のセリフのあとは、なにを書いても邪魔になるだけだよ」
「……少し残念です」
 
 
「ところで、今日はいったいどういうわけで?」
「ああ、うん。私はね、作品が完結した夜は、誰かといっしょにいるようにしているんだ」
「そうなんですか?」
「また変な話をするとさ、今までいっしょにいた登場人物、今回なら加悦と昴かな。その2人が、完結と共に、私の手元から離れていくんだ。もう手の届かない、二度と会えないようなところに。
 たぶん、これが親離れというやつなのかな。2人は、もう私なんかに見られる必要がなくって、2人だけで物語を作っていけるぐらい、成長したんだと思う。
 でも、私はまだまだ子供だからさ、子離れがすごく寂しい。特に完結直後の喪失感はすごくきつい。だから、誰かといるようにしているんだ。
 本当は、心から2人を、祝ってあげたいのに」
「いいじゃないですか、悲しくなったって。今夜は、私がずっと、いっしょですから」
「そろそろ、大丈夫だと、思うんだけ、ね」
「強がらないでください。まずは、涙を拭いてください。私まで悲しくなってしまいます」
「うん、うん……」
「今夜ぐらい、声を出して泣いてもいいじゃないですか。ここには、私しか、いませんから」
「うん……うん……」
 
 
「……ん、落ち着いた」
「それは良かったです」
「みっともないところ、見せちゃったね」
「そんなことありません。それだけ感情移入できているってことです」
「ありがとう。私はもう大丈夫だから、みひろさんも涙を拭いて」
「……すみません」
 
 
 
 
「覚えてますか? 初めて会ったときのこと」
「『キミは処女?』だっけ?」
「あの質問、本当に驚きましたよ……ところで、もし処女だったらどうするつもりだったんですか?」
「いや、特に問題なかったけど」
「…………え?」
「あれは一種のフルイみたいなもので、あれぐらいで拒絶するような担当はいらないから」
「そうでしたか……」
「その点ではみひろさんは素晴らしかった。物怖じもせず、質問に答えてくれたからね」
「ははは、はは」
 
 
「サドやらマゾやらもお話ししましたね」
「私、マゾかもしれないね。叩かれるのが、案外良かったし」
「(何をいまさら……)」
「そうだ、せっかくだから、ここで一発」
「なにがせっかくなのですか、なにが」
 
 
「メモを読み返していたけど、キミの体験談、壮絶だよね」
「……どんな内容でしたっけ?」
「ほら、放課後の教室の話」
「(妄想だから覚えてないなー……)」
 
 
「ツンデレやら素直クールやらも……」
「覚えてますよね?」
「も、もちろん」
「では、素直クールとクーデレの差は?」
「……えーと」
「夜の授業を始めましょうか」
 
 
「取材を兼ねて、遊びに行ったこともありましたね」
「楽しかったね」
「そうですね。けっこう楽しかったですね」
「また、行きたいね……また」
 
 
「コスプレもしたね」
「本当はもっといろいろあったんですけどね」
「意外と楽しめたから、もっとやってもいいかも」
「……ほう。では、みひろブランドの新作にご期待下さい」
「うん、期待する、期待しとく」
 
 
「連載が始まってからも、いろいろやりましたね」
「ラブホテルに行ったし、メイドのコスプレもやったし」
「私の胸を揉んだり、レイプごっこもしましたね。あと自慰のやり方とかも」
「……あえて触れなかったところなのに」
「ふふふ」
 
 
「初めての担当、どうだった?」
「たいへん勉強になりました」
「……私が初めてで、良かった?」
「正直に言いますと、本当は、漫画家の担当になりたかったんです」
「そうだったの?」
「今だから言えますが、最初はあまりモチベーションも上がらなかったですよね……
 ですが、あおいさんのプロ意識というか、作品への姿勢に、すごく、すごくすごく、感動しました。
 ……というより、私が、甘かったんです」
「最初ってそんなもんだよ。次に生かしてもらえれば、私も嬉しい」
「……はい」
 
 
 
 
「朝日、出てきたね」
「……そうみたいですね」
 
「ではそろそろ……始発の時間ですので」
「……うん」
 
「あ、そうだ。今度、晩ご飯食べに来なよ」
「……どういう風の吹き回しですか?」
「別にいいじゃない……カレーぐらい、作るから」
「なるほど。では私はポテトサラダでも作りますね」
 
 
 
 
 
 
 
 
 第16話「完結」
 
 
「では、あおいさん。さようなら」
「ん、さようなら……みひろさん」
 
 

       

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