愚か者のクラブ
「お便り来てるわよ」
「ほう?」
『カートが使ってたのはジャガーではなくムスタングだった気が』
「ああ。なるほどこれは簡単な話さ。実はカートは愛機としてムスタング以外にもジャガーも使ってたんだ。最も有名な曲『Smells Like Teen Spirit』のPVで使われているのはムスタングの方だから、その意味ではカートと言えばムスタングと云うのも無理もない話かな」
「音は結構違うみたいだけど、どちらも愛用していたという話よ」
「(ちなみに…どう違うの?)」
「ばか」
■フェンダー・ジャガー
「ジャズマスター」の上位機種。
尻に向かって斜めに傾いたデザインが特徴。
よく分からないスイッチが多い。
音は鋭く「ギラギラ」と評される。
■フェンダー・ムスタング
ジャガーに比べやや丸っこくて細長いデザイン。
ピックアップが斜めになってるのでそこで見分けられる。
ジャガーより比較的シンプルな構造。
音は低音がチープで軽めと評される。
*ただしカートは改造を施している。
†
「ニルバーナとブラー。共通点は何だと思う」
「どちらもやりたいことを実験的に貫いてきたバンドなのに、一番売れた曲が一番適当に作った曲」
・・・・・・
「ブラーのsong2なんて、2分で終わるからsong2。アルバムの他の曲とも雰囲気違うしこんなのブラーじゃないって曲よね。…合ってる?」
正解だが僕のセリフを奪わないでくれ。
「まあ。そんな曲やバンドなんて腐るほどあるわよね」
「洋楽はまずアルバムを出してからその後で人気の高い曲をシングルカットすることが多い。つまり洋楽はアルバムが売れる。一曲宣伝用の曲が注目されたらみんなその曲目的でアルバムを買う。そのほうが売り上げがいい…ってことだと僕は思ってる。詳しいことには興味はない。何にせよプロは金を生むことが商業的成功だから仕方ないのだろう」
「宣伝用に書いたような、彼らの中では情熱のこもってない安っぽい曲に限って評価されるっていうジレンマは少なからずありそうね」
「俺が好きな自分の曲は人気がないんだってな具合かな」
「好きなだけならプロよりアマチュアの方がいいって言われる所以ね」
「気は楽だし、ストレスやジレンマは少ないだろうね」
「でも『僕は私は本当のファンだから人気曲が嫌いでマイナーな曲が好きだぜ!』ってアピールされるのもなんだかなぁとは思うわ」
「意外なこと言う」
「別に構わないのだけれど、本当に好きなら隠居した老人のように黙って一人で愛するもんだと思うわね。まるで新興宗教。見返りを求めるかのように好きだの、自分の方が理解してると言わんばかりに薀蓄。音楽が好きなのか「そのアーティストが好きな自分が好き」なのか分かったものじゃないわ」
「・・・君もなかなか毒を吐くようになったね。君のそういうとこ、好きだよ」
「なっ何を突然っ!」
---間。
「そ、そんなことより練習と…い、いい加減メンバーを…」
「ああ。メンバーなら明日メンバー募集を見て加入希望の人と会うけど、良かったら一緒に来る?」
「・・・・・・・・」
「ドラムの人だよ」
「いや、いつの間にそんなこと」
「随分前からやってるよ。もう10人は会ったんじゃないかな」
「言えよ」
結局僕らはアナルファックピストルズ。
遅刻・欠席・連絡不備
気にしちゃいけないルーズな奴ら。
ゴー・アナルファックピストルズ
次回はメンバー募集について。
ちなみに洋楽聞いたことない。
だって薀蓄したいだけ。
凛と咲いて。