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とある恋文/九曜真唯

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「なんてね」と彼女が呟く照れ隠し本気の言葉が冗談に



人前でこっそり交わすやりとりは彼女発案指先サイン



鈍色の低い雲見て「落ちてきそう」なるほど確かにそれは怖い



交差点向こう側で耳慣れた名前呼ぶ声



「これはなに?」彼女の口癖そう言って何でも手に取る未知満ちる




傷だらけ失敗の跡指先に玉ねぎで滑る包丁さばき



電話よりメールがいいと彼女から「それなら言葉が残るでしょ」



散る桜見ては呟く「儚いね」「たくましいわよ。また咲くから」



「ぴったりね」指輪に息を吹きかける体に馴染む思い出の環



さっきまで一緒にいたのに別れ際「もうちょっとだけ」と呼び止める


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