禁煙カフェ17/元祖天才チンコレディブル
「に、二次元いいですよね~。ハハハ……」
「そうだろう! 歓迎するぞ我が同士よ!」
二次元、それは厚みを持たぬ世界……。
普段は閑静な、町の静脈の様な街道に、まるで血栓の様な人だかりが出来ていた。
マスコミが三脚を使い、人込みを俯瞰している。
喫茶店の入り口に、黄色と黒の警戒色のテープが張られ、立ち入り禁止になっていた。
そのテープの内側、喫茶店の店内に、うつ伏せのまま事切れた全裸の女が床に張り付いていた。
女の輪郭はチョークでなぞられ、1、2、3……と番号の書かれた紙が置かれていく。
「いやー、酷いもんですね」
「まったくだ」
事件現場となったカフェでは、警察官と刑事が入り、捜査が行われていた。
「しかし、どうやったらこんな……」
生前はプリケツだったであろう全裸の女の臀部は、もはやペラケツだった。
「目撃者の証言によると、童貞魔法がどうのと」
「あぁ? 魔法だぁ? んな馬鹿な話が……」と、刑事はペラケツを一瞥する。
「でも、それ以外に説明が……」と、警察官もペラケツを一瞥した。
「……いやいや、まさかそんな」と、刑事はケツの谷間を眺める。
「いやいや、しかし……」と、警察官は脇からチラッと見える横乳に目が行った。
「いや……いやいや」と、刑事がしゃがんだ。
「ですが……いやしかし」と、警察官も並んでしゃがむ。
「そんな筈は……」
「ですが現に……」
静かなる沈黙。
「……」
「……」
そして交わされる目線と目線。
通じ合う意思。
二人は黙ったまま頷くと、女を頭からめくり始めた。
ボーイッシュな短髪、美人ではないが、少し幼さの残った可愛らしい顔立ち、細い首、くっきりと浮き出た鎖骨、そして……。
「お、おぉぉぉぉぉ!」
「いやいやいやいや!」
「……っざけんな!」
「え?」
女の声が聞こえ、二人はふっと目を胸から逸らすと、平らな顔がこちらを睨み付けていた。
二次元女は死んでは居なかった!
彼女は刑事に厚みの無くなった手を突き刺した。厚みのない手はこの世の何もかもを切り裂く、鋭い剃刀となっていた。
「ぐふぃ!」
「け、刑事さん!」
「お前、私の手下になりな!」
女から瘴気が噴出すと、公務員から厚みが奪われていった!
刑事の顔が、手が、まるで白紙の様に真っ白に変化していった。
「ペラァァァ……」
「う……あ……」
「いけ! ペラーマン! ここに居る全ての人間をペラーマンにするのだ!」
「ペララララッ!」
「うわぁぁぁぁ!」
こうして、カフェは瞬く間に二次元女に占領されてしまった。
「よし、ゆくぞ! 我が下僕どもよ! 私のダーリンを取り戻すのだ!」
「ペラァァァァァ!」
「ペラララァァー!」
「ペラペラァァァ!」
「チョッチュネー!」
こうして、街道に出来た血栓は消えた。
厚みのない集団は、空気抵抗を受けないように横向きで歩きながら、カフェを後にした。