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ブラックバード・アタック(12.09.2012)

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 「なぜグリーン小隊はこっちの攻撃に回らないんだ!」
 地球連邦軍のリチャード大尉は苛立っていた。「ヤタガラス」の異名を持つ彼の小隊は移動中の廃コロニーに取り付けられた核パルスエンジンを停止させるために攻撃を仕掛けているが、展開している味方の部隊が少なすぎるのだ。
 グリーン小隊の隊長機が応答してきた。リチャード大尉の愛機、黒い機動歩兵の内部コクピットスクリーンにグリーン小隊の交信アイコンが表示される。
 「こちらグリーン小隊、我々はコロニー軍の足止めを命令されている」
 リチャードは眉間にシワを寄せずにはいられない。
 「コロニー軍は身内同士だぞ!」
「上層部にとってはそうではないらしい。なんにせよ俺たちは命令に従う。それが軍隊だろ。交信終了」
 アイコンが消失して無機質な沈黙に変わる。 
 「くそっ!政治的駆け引きなんかよりも、コロニーの移動を止めて市民を守るのが軍隊の本分だろうが!」
 叫ぶリチャード大尉の機体を、突然ビームが襲う。
 間一髪でかわすが、ビームを放った小型の移動砲台はすぐに残骸の影に姿を隠してしまう。機動歩兵よりも極めて小型、しかも遠隔操作の無人砲台ゆえ反撃が困難だ。
 「遠隔操作の無人砲台・・・ファンネルっていうのか、アレを止めなくちゃならんのに・・・!」

 混沌とした戦場をプラチナバードはその中心へ駆け抜ける。
 連邦、Xionの混戦の中をすり抜けて中心の廃コロニーへ向かう。
 その白銀のボディを一瞬でえぐって蒸発できるビームの流れ弾がかすめていく。
 ときおり所属不明機であるプラチナバードを狙って放たれるビームもある。
 しかしビームがプラチナバードに命中することはない。
それほどに、グレースの操縦センスは卓越していた。
 それゆえ、グレースもクレアもまだ殺人の業を背負っていない。
すでに廃コロニーは目の前となっている。宇宙に浮かぶ、巨大な宇宙ステーションの廃墟を、戦争がもたらす幾千のビームと爆発の煌めきが彩っている。
 
 プラチナバードがコロニーの中に突入すると、その中は広大な市街地になっていた。
 かつては住居用として使用されていたのだろう。すでにコロニー内から空気が抜けきっていてもはや住居している人間はいないだろうが。
 そして市街地の中心には、コロニー内から空気が抜ける原因になったであろう、旧型の宇宙戦艦たちがその骸を晒していた。
 ビルよりもはるかに巨大な宇宙戦艦たちが縦に突き刺さったまま、あるいはビルを押しつぶすように横たわったまま朽ち果てている。
 上空から見るとまるで巨大な古代生物の骸のようだ。
 プラチナバードは、白き鳥はその上空を旋回する。
「グレース、どこがその入口か分かるのか」
 「うん・・・集中してみる・・・なんだか声が分散して聞こえて・・・」
 コロニーに近づくにつれて、グレースに呼びかける声は、ぼやけていくのだった。
 まるでこのコロニー近辺全体に分散しているような・・・。
機体のアラートが思考を遮った。
 グレースはすでに慣れた手つきで操縦桿を操作、飛来したビームを回避する。
 モニターに表示される敵機数は3機。すべてが漆黒に塗られた可変機動歩兵の小隊だ。
 「邪魔しないで!」
 グレースは飛来した漆黒の機体が「ヤタガラス」と呼ばれる連邦のエース部隊であることを知らない。
「所属不明機・・・ありゃあReGZじゃねぇか・・・」
 「ヤタガラス」隊長リチャード大尉は驚いていた。ReGZは連邦軍内部でもかなりハイスペックな機種だ。「ヤタガラス」の使用するZ+と呼ばれる機体よりも新型で、配備数も少ない。それがXionに鹵獲されていたとは・・・。
 「手を焼きそうだな・・・」
 「へっ、それでなくちゃ楽しくねえ!」
 腕は確かだが口の軽い3番機のパイロットが通信してくる。
 「自信があるのは結構だが、忘れるな、早急に戦場中に暗躍するファンネルの操作源を叩くのが我々の本分なのだ」
 リチャードは隊長としてたしなめるが、強敵の出現に血が騒ぐのは抑えられなかった
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