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回収屋

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 ■■■■教団が活動を開始した。凍結が解除されたのである。信者は北極まで到達した教祖■■伯爵を冒険家と讃えるが彼は詐欺師だった。しかも魅力的ではない詐欺師だ。
 この胡散臭い紳士は革命家■■・■■・■■の後裔を自称している。私の手に銃がある今視界に入れば射殺したい。
 多くのインセンス軍団兵が彼の傘下へ入った。容易ではない手法で作られたプラスチック製の人工臓器を埋め込まれ軍団兵はチョコレートしか食べずに爬虫類じみた眼球を正確に相手の急所に合わせる。この私設軍隊のおかげで伯爵は未だに暗殺されずにいる。チョコレートを安定供給している方法についてははっきりしない。
 ある日教団の関係者である、■■■・■・■■と名乗る若いがくたびれた不眠症らしい男が自宅に来て砂漠にいる飛べない鳥の話をしたかと思うと、家屋を褒めだした。
「これは美しい様式で、いずれにしても到達していますよ。あるべき所に」
「それは花の生い茂る様を指摘しておっしゃっている?」
「デザインについての稚拙ながら確かな我が指摘ですよ。そういえばご存知ですか、海賊船の内装は」男は床板に顔を近づけて眺めている。「我が皇国と共和国では全く違う。海賊でさえ共和国人はビジネス・ライクだから装飾というものを知らない。知っていても採用しない。嘆かわしいことです。とはいえ例外的に賛美するならば、注ぎ口が二つある薬缶ですね。彼らのお気に入りで。それは神聖なほうと穢れたほうに分けられている。目を洗うとき、彼らは左目を不浄としていたのでそちら専用に誂えた水差しからでないと薬液を注ぐことを良しとしなかったそうです。ああところで昨今は火事の多い時期です。埃の溜まり方に不安は覚えませんか、掃除せずにいて」私は彼がここの外、遠い外国から来た人物ではないかと思った。我々に掃除という習慣はない。
「帰ってくれませんか」
 と私が言うと彼は何も言わず帰った。
 数日後、テレビ番組で彼を見た。現在の若者は歩き方がよくないというテーマの番組だった。インタビューされている人物の後ろにこの勧誘者が現れていきなり自分の胸部をナイフで刺し始めたのだ。これはあまり良くない死に方だ。少なくとも骨が邪魔をして簡単に致命傷には至らないだろうし。彼はやむなく路傍のレンガを拾ってこん身の力で自分の真上に放り投げ、頭に落下させ死んだ。

 ■■軍閥の憲兵が五人も家に来た。とても丁寧だった。
「それであなたは革命を、武力蜂起を画策しているそうですが」「はいしています」私は答えた。「申請によると狂気誘発は脳内埋め込み式の機械を使用で?」「ええ」「資金は足りているのですか?」「足りていないです」「お仕事は?」「映画館の受付」「なぜ革命党を脱退したのですか?」「上司が高圧的だったので」「アレルギーはありますか」「いえ特に」「好きな男性のタイプは?」「まあ年上」「資格はお持ちですか」「第二種傷害許可証を」「先日の■■■・■・■■氏の自殺について」「あれは不幸な現代病の被害者の」「青い蝶が飛ぶのを見たことはありますか」「ええ、人の」私はどうもうんざりして答える。「人の目から出てくるのを」
「まず最初に簡単な操作説明を致します。■■■機構についての。知ってのとおり都市外郭は■■■■の上に建っていますね。わたしは呪詛について学習した経験がありまして。親の期待があったんですね。あるとき外壁の際まで歩いたんです。蓮華の花が咲いていました。一面に。そこで左手の親指が腐った男と出会ったのです。八倍の濃度の■■薬を私は彼からもらいましてね。稀有な経験です」「僥倖ですね」
 そのとき、表から何かが聞こえてきた。私は逃げ水屋の隊商だと思った。彼らは通りの逃げ水をつかまえて碧い硝子の水差しに入れて飲ませてくれる。それは暗くて涼しい最高の場所で冷やされた地下水みたいに暑さを忘れさせてくれる。その日も表は蝉の声が響く真夏日だった。
 我々は表に出たが、それはどうやら行商ではなく葬列らしかった。黒い服の列が葬送歌を歌ってやって来た。
 彼らが近づくに連れて葬列というのも間違いだと分かった。死体回収屋だ。彼らが携行する死体袋と棺桶にはすでに何十もの屍が入っているがさらに求めているのだ。
 丁度路上に真新しい女郎の死体が。誰かが置いたであろう名も知らない赤い花とともに彼女は布に包まれて運ばれていった。
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