「…にしても、よく寝ているのぉ~。見たところどぉやらおぬしが守ってきたんじゃろぉ。」
「えぇ、そぉなのよ。」
「…悪意のかけらもない、きれいな目をしてるの。」
―2年前・ローマの活性化工場
「おい、ジョセフ。さっきでた駄作飛ばしといてくれよ。」
「はい、わかりました。」
この時、チョンは命を宿した。
「ごめんよ、何の罪も害もないお前をとばさなくちゃいけない。つらい仕事じゃよ。」
チョンはやさしい目をしてジョセフを見つめた。
「言葉も話せないんじゃな、まるで子猫ちゃんだな、ははっ♪」
(おじいさん、ありがとう。そのやさしい気持ちだけで十分だよ。僕をゲートに入れてください。自分をせめないで)
「!!!!。」
「い、いま何か言ったのかい?」
チョンはジョセフを見つめていたが、声は発しない。
「・・・。」
「おい!!ジョセフ。えらく遅かったじゃね~か。老いぼれに仕事をやってるだけありがたいと思え。」
「すみません。」
「飛ばしてきたんだったら、さっさと持ち場にもどれ。」
「はい!!」
…ジョセフはチョンを飛ばせなかった。
「わるいね。しばらくここでじっとしていてくれ。」
ジョセフはチョンを自分のロッカーに隠した。
声を発しないチョンは見つかるはずもなかった。
ジョセフは仕事を終え、帰途を急いだ。
「あら、おかえりないさい。」
「うぬ、ただいま…」
「その荷物はどうしたの??」
「これは…」
「モンスターじゃ。」
「!!」
しかし、妻は冷静だった。ジョセフのような優しい男がすることだ、何か理由がある。
ジョセフは事情を伝えた。
「そうだったの。」
(ありがとう。)
「!!。」
「あなた、聞こえた?」
「あぁ…どうやらしゃべりはしないが、テレパシーをつかうようなんだ。」
チョンは2人を優しくみつめた。
その日から、老夫婦と過ごすこととなったチョン。
チョンは2人にとってわが子のような存在となり、楽しい日々を過ごしていた。
あの事件により、老夫婦は天へ召された。
ゼシカは飛ばされて、ゲイツ島に来るまでに1度だけチョンのテレパシーを聞いていた。
(君は他のやつらとちがうよね?ありがとう。僕は必ずここへ戻ってくる。お願い、協力して。)