第三話「ドンジャラ良江の演説」
「地獄へようこそ、クズども。
麻雀に人生を捧げてきた、
麻雀ぐらいにしか人生を賭けられなかったクズども。
麻雀で人生を取り返そうとしている愚か者ども。
どうして真っ当な人生を歩んでこなかった?
どうしてまともな仕事に就かなかった?
友人と思い出を作らなかった?
恋人と愛し合わなかった?
仲間を作らなかった?
真面目に努力を積み重ねてこなかった?
おまえたちは麻雀を愛した。
麻雀も少しばかりはおまえたちを愛してくれた。
だからどうした。
取り戻しようのない貴重な時間を浪費して手に入れたものは何だ。
金か?
運か?
点棒か?
雀力か?
名声か?
得意技を冠せられた呼び名か?
そんなものは全て腐った大便だ。
便器から流れ出る水さえ避けて通る代物だ。
いくら鍛えたところで、いくら磨いたところで、
馬鹿ヅキの素人に突き崩される、砂の城だ。
天国などない。
幸せなどない。
満たされることなどない。
この大会で優勝したところで、クズどもの頂点に立った、それだけのことだ。
クズの王。
キングクズ。
得られた権力をいくら行使したところで虚しさしかやってこない。
一つの虚しさを打ち消すと百倍の虚しさに襲われる。
空っぽだ。
人は年を取る。
いずれ運にも見離される。
ツモってもツモってもクズ牌しか来なくなる。
リーチ棒も卓に投げられない状況において
それでもおまえたちはまだ麻雀を愛してしまうだろう。
だが麻雀はもうおまえたちを愛しはしない。
負ける悔しさを味わいたくなければ、死ねばいい。
麻雀以外の選択肢が人生にいくらでもあったことから目を背け、
いつまでも現実から逃げていたければ、勝ち続けるがいい。
勝っても負けても笑いものだ。
ならばその中心でおまえたち自身が、
爆死するまで爆笑していろ。
負ければ地獄。
勝っても地獄。
勝つか負けるか二つに一つ。
地獄か地獄か一つに一つ。
ドンジャラ良江の名において宣言する。
これより第三十七回全国麻雀大会を開催する。
私はこの大会が終わったら結婚する。
以上!」