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第七話 復縁

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その後三人は電車を降り、駅の中をふらふらと歩き続けた。気まずい雰囲気で会話は一切ない。やがて木島は勇気をだして二人にこう提案した。
「なあ、こんなことしててもしょうがない。行かないかどこかへ」
 篠崎がぼそぼそと答えた。
「ああ……。そうだな。でもどこへ行けばいいんだ」
 浜田が思いつきでこう答えた。
「国会にでも行けばいいじゃないか。大声で政府を批判すればいい」
 その声は投げやりにも聞こえた。木島はそれに同調して元気よくこう言った。
「そうだ。それがいいここからもそう遠くはない」

 三人は電車に乗り国会を目指した。無事国会正門前に着く。が、三人はなかなか大声で政府を批判することができなかった。もうキセルで勇気を使い切ってしまった。のかもしれない。
 やがて三人はこんなやり取りを始めた。
「お前が最初にやれよ」
「いや、お前が」
 まるでダチョウ倶楽部のコントのできそこないのような会話が繰り広げられた。
 数分後そんな彼らを見て警察官が近づいて来た。三人は慌てる。警察官はこう言った。
「ちょっとあんたら職務質問させてくれ。いいよな」
 木島は思わずこう答えた。
「え、ええ。構いませんよ」
 三人は住所や氏名、来た目的などをひとしきり話した。警察官はこう言った。
「そうですか。ご協力ありがとうございました」
 三人は腹が立ち、なんとなく居心地が悪くなった。木島が二人に提案した。
「今日は解散にしないか」
 二人は同意した。

 駅で二人と別れを告げ木島はやるせなく自宅への帰路に就いた。電車に乗り家に着き
「ただいま」
 と小さな声で言った。返事は返ってこない。いつもどおりだ。そう彼は思った。が、いつも通りではないことに気づいた。いつもは無視されていたのだが、今は本当に答える人がいないのだ。それに気づくと彼は自分が無性に寂しくなっているのに気づいた。彼はその思いを無理矢理頭から追いやろうとした。気のせいだ。そう無理矢理思った。
 木島はテレビをぼーっと見ていた。ずっとぼーっと見ていた。

 一時間もたつと寂しくなってきてついに木島は電話をかけた。妻の実家に。復縁をするためだ。電話番号は覚えていなかったが机の奥からメモを探し出した。妻の実家はここからそう遠くはない。同じ埼玉県内だ。だから直接行けないこともない。が、恥ずかしくて怖くてとても行けそうになかった。
 トゥルルルルトゥルルルルと電話の電話の着信音が鳴っている時彼は思い出した。彼と妻が出会った時のことを。
 木島と妻が出会ったのはお見合いだった。木島は彼女に一目惚れした。なにしろそのころの彼女は痩せていて綺麗だったのだ。今では面影もないが……。同席していた妻の父は小さな建設会社を経営していて人が良さそうだった。母も優しそうでいい女性に見えた。
 そういうわけで木島はすぐに結婚を申し込んだ。彼はためらっていた妻を必死に説得した。そして、一ヶ月ほどで結婚した。
 ガチャッ。
「岡崎です。もしもし」
 木島がそんなことを考えているうちに電話がつながった。男の声だった。木島は緊張しながら質問する。
「私、木島ですが、私の妻に変わってくれませんか」
「ちょっと待ってください」
 と言って、保留のメロディーが流れた後、その男はこう答えた。
「姉は話したくないと言っていますので切ります」 
 ガチャッ。姉?兄妹がいたっけ。そう思った木島はやがて妻に弟がいたことを思い出した。たしか、父の建設会社を継いだはずだ。
 それにしても電話で話しさえできないとは。絶望感にさいまなれた木島は座り込み、うなだれた。そして冷蔵庫からビールを取り出した。飲まないとやっていられなかった。

 木島はこのとき全く思っていなかった、自分がこの社会を本当に変えてしまうほどのことをしてしまうとは……。
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