トップに戻る

<< 前 次 >>

三人目!

単ページ   最大化   

 一難去って、また一難とはやってやれないわね。
 前回、女狐が私の洋くんに手を出してきたかと思えば、次はこの人ですか。
 正直言って、この人は苦手なのよね。
 私の唯一の天敵ってところかしらね。
 本当に勝てる気がしない。なんていうか、その物理的に……

「あのー愛穂さん? これはどういう事なんでしょうか?」
 私の目の前にいる最悪の女。愛穂に質問をする。
「何って、あんたの喜ぶ事をしてあげてるんじゃない」
「いや、全然嬉しくないわよ!」
 朝っぱらから全身をロープで縛られて喜ぶ変態なんかいるわけないじゃない。
 まぁ……洋くんが縛って、それを一日中見られてるのなら話は変わるけどね!
「あー、あー、愛穂? あんた何しに来たのよ?」
 まさか私を縛るためだけに来たわけじゃないんでしょ?
「あんたを縛りに――」
「マジっ!?」
「嘘に決まってるでしょバカ」
「うぐぐ……」
 何で、この女にここまで言われないといけないのよ。
 てか、私を縛りに来たわけじゃないのなら、何しに来たのよ?
「アタシの洋に会いに来たに決まってんじゃん」
「な――っ!?」
 あんたも洋くんに会いに来るなんて――
「あんたの好きにはさせないわよ!」
 この私がいる限り絶対に!
「そうは言っても、あんたロープでグルグルに縛られてるじゃない」
「うぐ――っ!」
 そうだった。ロープがちょっとくい込んで痛気持ちいい状態だったわね。
 クソッ! なんて計画的な行動なのかしら。
 あの女狐とは全然違うわね。
 やはり最悪の女。この女は苦手だわ。
「さぁーて、アタシの洋に会いに行こうかしらね♪」
 ――だけど、あんたは一つだけ重大なミスを犯してるわ。
 そう。もっとも愚かなミスを……

「く、ふふふふふ……」
「……何? 気持ちよすぎて頭でもおかしくなったの?」
「私はいつでも正常よ!」
「いやいやいや♪」
「笑わないでよ!」
 別に面白い事なんか言ってないのに、笑わないでよ!
「――で、頭がおかしくなったんじゃないのなら、どうしたのよ?」
「ふふん。あんたの愚かしさに笑いが込み上げてきただけよ」
「アタシが愚か?」
「ええ」
 あんたは今世紀最大の愚かな女なのよ。
「私の洋くんに手を出そうとしてるけど、残念ながら洋くんは今いないわよ」
「…………え?」
「洋くんは、昨日から友達の家に泊ってるわよ。おかげで、私が寂しくて泣きそうなんだけど」
「あんたの状況なんか知らないわよ」
「いや、寂しさのあまり枕を涙で濡らしてるのよ」
「嘘でしょ。あんたの事だから、洋の部屋で変な事やってんでしょ」
「…………」
「黙るなよ」
「ちぃ……何で分かったのよ」
 確かに洋くんの下着を漁ったり、布団の中でゴロゴロしたり、カメラを仕掛けたりしたけど、
何でこの女がそれを知って――
「誰でも予想が出来るわよ」
「そうでしたか」
 まぁ、この女とも長い付き合いだしね。バレて当然か。
「はぁ。洋が居ないのなら仕方ないわね。一旦仕切り直しとしましょうかね」
 そう言って、帰ろうとする愛穂。
「ちょっ、ちょっと待ちなさいよ。帰るならこのロープを解いてから――」
「いやよ、めんどくさい」
「ちょ――――――っ!?」
 私の叫びも空しく、帰っていく愛穂。
 うぅ……洋くんが帰ってくるまでこのままか……
 ほんと、あの女は最悪だわ。
 私の天敵。唯一勝てない相手。

 あーもう! 何でこう面倒事ばかり起きるのよ!
 私はただ洋くんとイチャイチャしたいだけなのにー!
3

tanaka 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

<< 前 次 >>

トップに戻る